[書誌情報] [全文PDF] (458KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 94(12): 1293-1298, 1993


原著

慢性腎不全患者の続発性上皮小体機能亢進症に対する上皮小体全摘除術後自己移植術に関する検討

1) 市立札幌病院 外科
2) 北海道大学 医学部第1外科

脇坂 好孝1)2) , 岩永 力三1) , 中西 昌美1) , 内野 純一2)

(1992年8月20日受付)

I.内容要旨
慢性透析療法を受けている患者に対してしばしば上皮小体全摘除術とこの摘除した上皮小体の一部を自己移植する手術が行われるが, これについては未だに多くの論点が残されている.そこで,我々は今回当院において慢性腎不全のために長期間に渡って透析療法を受け,本法を行った21例に対して,様々な角度からretrospectiveな検討を加えた.結果は,術前画像診断では,摘除した83個のうち, RI検査による検出率は50%であったのに対して,頸部CTでは72.9%と高い値を示した.また,摘除した上皮小体の実測径はCT径より平均5~6mm大きかった.つまり,術前の上皮小体の大きさ,位置の検索には特殊な異所性の例を除くとRI検査よりもCTが有力であることが明らかになった.個々の例における透析歴と上皮小体総重量との間には有意な統計学的相関性はみられなかった.術前の活性型ビタミンDによるパルス療法の効果に関しては,実施群の平均上皮小体総重量2.6グラムに対して,未実施群で5.8グラムとなり,この治療による大きさの縮小が示された.全例中5腺以上のものが6例,胸腺内に異所性に存在したものが1例あった.組織学的には,結節性過形成が最も多く63個,次いでび漫性過形成が19個,腺腫が1個であった.重量が4グラムを超える例では,血中C-PTH値と上皮小体総重量との間に有意な統計学的相関性はみられなかったが, 4グラム以下の例では正の相関が認められた.この事実は,慢性透析患者における上皮小体の腫大ではある一定の大きさまでは正常機能を保ちつつ増大するが,それを超えると組織学的変化が次第に生じて機能異常が出現する可能性を強く示唆しているものと考えられた.

キーワード
chronic renal failure, secondary paratyroidism, total paratyroidectomy, paratyroid autoimplantation


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。