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日外会誌. 94(12): 1277-1284, 1993


原著

再生肝の温虚血再灌流に伴う高エネルギーリン酸代謝障害に関する実験的研究

香川医科大学 外科学講座第1外科学

唐澤 幸彦 , 若林 久男 , 國土 泰孝 , 田中 聰

(1992年8月19日受付)

I.内容要旨
門脈枝結紫による代償性再生肥大肝(再生肝)の温虚血再灌流障害を, in vivo 31P-Magnetic Resonance Spectroscopy (31P-MRS) を用いた高エネルギーリン酸代謝の測定によって検討した.再生肝モデルは, ラットを用い,全肝の約70%を支配する門脈枝を結紮することにより作成し,結紮14日後に実験に供した (PBL群).門脈枝非結紮葉の肝重量の増加は平均56.2%であった.対照は無処置群とした (Control群).温虚血は門脈,肝動脈,胆管を一括した全肝虚血とし, 30分間の虚血の後,再濯流後120分までのスペクトルを測定し,β-ATPと無機燐 (Pi) の面積比を指標として評価した.あわせて, レーザードップラー法によって肝組織血流量を測定するとともに,温虚血再灌流前後の血清ミトコンドリアGOT (m-GOT),血清GPT値を測定し,病理組織学的検討を行った.その結果,虚血により両群とも同程度の急激な高エネルギーリン酸代謝の低下を示したが,再灌流後の回復は,再生肝では正常肝に比較して有意に良好であった.またPBL群では, m-GOT,GPTの上昇が有意差はないものの抑制される傾向にあった.病理組織所見では,正常肝では中心静脈周辺の肝細胞壊死,空胞変性等がみられたが,再生肝でのこれらの変化は軽度であった.以上の結果から,再生肝では正常肝に比べて温虚血再濯流障害が軽微であることが示された.

キーワード
再生肝, 肝温虚血再灌流障害, 31P-MRS, 高エネルギーリン酸代謝


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