[書誌情報] [全文PDF] (1247KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 94(12): 1249-1255, 1993


原著

大腸腫瘍におけるK-ras変異およびPCNA標識率を用いた細胞動態に関する検討

金沢大学 医学部第1外科

田中 松平 , 大村 健二 , 石田 文生 , 渡辺 洋宇

(1992年8月25日受付)

I.内容要旨
大腸腺腫21病変,癌53病変についてK-ras遮伝子12, 13, 61コドンに対する変異をPCRおよびdotblot hybridizationを用いて解析した.またPCNA抗体を用いて組織学的に腫瘍細胞の標識率を算出し,腫瘍の増殖能を評価した. K-ras変異は腺腫で18.8%,粘膜癌では40.0%に検出された.しかし,浸潤癌では27.0%にしか認められず, K-ras変異を伴わない発癌過程をとる癌は,その深達度が粘膜内に留まる期間が短いものと推測された.臨床病理学的検討ではK-ras変異腸性癌の方が組織学的静脈侵襲陽性率が高く,遠隔転移が多かった(p=0.07).分化度の低下と間質への浸潤度の増加につれてPCNA標識率が高かった(p<0.05). K-ras変異は癌化の初期だけではなく,組織学的静脈侵襲や遠隠転移といった癌の浸潤転移にも関与することが示唆された.また, K-ras変異は組織学的静脈侵襲と,高PCNA標識率は間質への浸潤と関連し, K-ras変異とPCNA標識率はそれぞれに独立した癌の浸潤様式を示唆する指標となりうると考えられた.

キーワード
大腸腫瘍, K-ras変異, PCNA, 臨床病理学的解析


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。