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日外会誌. 94(12): 1244-1248, 1993


原著

胃全摘に伴う膵体尾部切除症例の Quality of life
-膵切除後糖尿病の発生を中心に-

金沢大学 医学部第2外科

松本 尚 , 三輪 晃一 , 津川 浩一郎 , 瀬川 正孝 , 伏田 幸夫 , 米村 豊 , 宮崎 逸夫

(1992年8月31日受付)

I.内容要旨
胃全摘に伴う膵脾合併切除185例を根治性とquality of life (QOL) の両面から評価した. No.⑩ ⑪リンパ節への転移率はそれぞれ18%, 20%と高率であり,また5年生存率は51%,さらにNo.⑩ ⑪リンパ節転移陽性例の5年生存率は25%であった.この中には10年生存を7例認めた. 5年以上生存した胃全摘67例に対して, QOLに関するアンケート調査を行った.術式は胃全摘膵脾合併切除術55例(左上腹部内臓全摘術6例を含む), Appleby手術5例で,胃全摘術のみの7例を膵切除例の対照とした.術前を100%として比較すると,一日の食事摂取量が術前の50%未満に著しく減少している症例が膵脾合併切除で10%にみられた.また体重の変化についても,膵脾合併切除で術前の80%未満に減少している症例が33%にみられた.術前に糖尿病あるいは耐糖能異常を認めた3例を除き,手術後にinsulinの自己注射の必要な膵切除後糖尿病となったものは11例であった.これらは膵脾合併切除例の19%に発生し,対照の膵非切除例での発生は0%であった.膵切除後糖尿病の発生は,膵切除量が約50%となる胃全摘膵脾合併切除術では52例中8例 (15%) であったのに対し,切除量が約65%となるAppleby手術では5例中3例 (60%) と有意に高率であった(p<0.05).また術後経過年数とともに膵切除後糖尿病の発生は増加していた.胃全摘術における膵脾合併切除はリンパ節郭清の点でその根治性を向上させるが,膵切除後糖尿病の発生も少なくなく,厳格な適応と術後のfollow upに留意が必要である.

キーワード
膵切除後糖尿病, 膵脾合併切除, 胃全摘, 術後合併症

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