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日外会誌. 94(12): 1231-1238, 1993


原著

胃癌における Epidermal Growth Factor Receptor 発現の免疫組織化学的および病理組織学的研究

神戸大学 医学部第1外科(主任教授:斎藤洋一)

吉川 惠造 , 加藤 道男 , 斎藤 洋一

(1992年9月22日受付)

I.内容要旨
ヒト胃癌の増殖や進展におけるepidermal growth factor receptor (以下EGFR) の意義を検討する目的で,胃癌組織を材料として,免疫組織化学的にEGFRを染色し,病理学的所見との対比をおこなった.その際,抗EGFRモノクローナル抗体の選択と組織固定法の選択に工夫と配慮をおいた.すなわち, これまで一般に用いられているTransformation Reserch Inc.製抗体 (cat.No. 1096) は,血液型A型糖鎖を認識する可能性を示唆する所見が得られたため,免疫組織化学的染色に用いることは不適当と考えられた.そこで染色は,胃癌65例の新鮮凍結切片を材料とし,抗EGFRモノクローナル抗体として, Oncogene Science Inc. Cat. No. GR01 (Kawamotoらの528IgG) を用いて間接酵素抗体法でおこなった.
胃癌65例のうち, 17例 (26.2%) がEGFR陽性であった.分化度および壁深達度との関連をみると,EGFR陽性例は,分化型癌では, 進行癌28例中15例 (53.6%),早期癌14例中1例 (7.1%) であり,未分化型癌では,進行癌15例中1例 (6.7%),早期癌8例にはなかった.分化型癌において,進行癌は早期癌に比較してEGFR陽性例が多くみられた (p<0.05) ことより,分化型癌の自然発育史においても.早期癌から進行癌に移行する過程またはそれ以降にEGFRが出現ないし増加することがあると推測された.
また進行癌のうち,未分化型癌は分化盟癌に比較してEGFR陽性例が少なかった (p<0.05) ことから,未分化型癌では,EGFRが関与しない増殖機構を有する可能性が推察された.
主腫瘍のEGFRの有無からみたリンパ節転移程度に差はなく,また主腫瘍とリンパ節転移巣におけるEGFRの有無は類似していたことから,EGFRの有無がリンパ節転移機構と関連性を有する所見は得られなかった.

キーワード
epidermal growth factor receptor, 胃癌, 免疫組織化学


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