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日外会誌. 94(11): 1209-1217, 1993


原著

肺扁平上皮癌における Ia (DR) 抗原・fibronectin・IV型 collagen・lamininの局在と予後との関連

日本医科大学付属第二病院 外科(主任教授:庄司佑 教授)
 (指導:天野 純治教授)

久吉 隆郎

(1992年8月19日受付)

I.内容要旨
切除された肺扁平上皮癌54例についてfibronectin (Fn), laminin (La), IV型collagen (Co), HLA-DR抗原(Ia) の4種の局在を免疫組織化学的に観察して,組織分化度,術後病期分類, TNM分類,予後との関連について検討した.施行した術式は肺葉切除術39例,肺全摘術11例,区域切除術3例,楔状切除術1例であり,病期はI期33例, II期5例, IIIA期12例, IIIB期2例, IV期2例であった.これらの切除標本を用いてパラフィン固定ブロックより原発巣辺縁部を選びHE染色を行った結果,低分化型は33例,中等度分化型17例,高分化型4例であった.さらに免疫組織化学的にABC法により4種のマーカーを染色してその結果を判定した.これらのマーカーの陽性発現率はIa抗原9例16.7%, Fn 13例24.0%, Co 24例44.4%, La 12例22.2%であった.このうち一種のみ陽性(陽性度1と表現)は14例,二種陽性13例,三種陽性6例であり,全種が陰性(陽性度0)であったものは21例であった. TNM分類との関係では, FnはN (+)群(16例)に比較してNO群において有意に陽性であり, T因子数増大とともにFnに陰性の傾向がみられた. La, Co, Iaについては,単独では有意差はみいだせなかったが, TNMの各因子数の増大とともにこれら4種の陽性率が低くなる傾向がみられた.術後病期,各染色性,陽性度(1症例における陽性のマーカーの数),分化度別に術後経過をみると,陽性度別の比較が最も予後に相関しており,癌死14例中13例 (92.9%) が陽性度0と1の群に集中しているのに反して,陽性度2以上では1例を除いて全例が生存中であり,生存群に比較して癌死群では有意に陽性度が低い値であった(p<0.05).組織分化度と術後病期のいずれについても有意差をみいだせなかった.以上より,肺扁平上皮癌においては, Fnは単独でも予後判定に有用であり, La, Co, Iaを加えれば,より正確に腫瘍の生物学的悪性度を評価し得る事が示唆された.

キーワード
肺癌, Ia (DR) 抗原, Ⅳ型 collagen, fibronectin, laminin


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