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日外会誌. 94(10): 1108-1111, 1993


原著

甲状腺乳頭癌非郭清例における頸部リンパ節再発について

1) 伊藤病院 
2) 横浜市立大学 医学部第1外科

杉野 公則1) , 呉 吉煥2) , 伊藤 國彦1) , 三村 孝1) , 尾崎 修武1)

(1992年7月9日受付)

I.内容要旨
術前良性腫瘍の診断で手術を施行した甲状腺乳頭癌症例について,直ちに再手術を追加すべきか否かについて,甲状腺乳頭癌における頸部リンパ節転移のnatural historyを検討した.対象は1976年から1985年の間に伊藤病院で手術を行った非進行性甲状腺乳頭癌患者のうち頸部郭清を施行しなかった196例(非郭清群)である.同時期に定型的根治手術を施行した783例(郭清群)をコ‘ノトロールとして比較,検討した.原病死例は両群ともに認めず,遠隔転移は非郭清群の3例,1.5%,郭清群の17例,2.2%に認められた.局所再発は非郭清群の19例,9.7%,郭清群の88例,11.2%にみられたが,両群間に有意差は認められなかった.局所再発は郭清群で残存甲状腺にみられた1例を除き,すべて頸部リンパ節であった.これらのリンパ節再発には両群とも年齢,原発腫瘍の大きさが影響していた.以上の結果より,術前良性腫瘍として手術された甲状腺乳頭癌に対して早急に再手術を施行する必要はなく経過をみるべきと考えられた.また,年齢と腫瘍径によるリンパ節再発率への関与は郭清群,非郭清群とも同様な傾向を示した.郭清群の約80%にリンパ節転移を認めたことから,すべての組織学的なリンパ節転移が必ずしも臨床的に顕性となってくるのではなく,なんらかの因子が働いている可能性があると考えられた.

キーワード
甲状腺乳頭癌, 再手術, リンパ節再発


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