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日外会誌. 94(10): 1078-1084, 1993


原著

重症感染症時のグルタミン投与
-ことに蛋白代謝と免疫能の面からの評価-

久留米大学 医学部第1外科

吉田 祥吾 , 山崎 国司 , 貝原 淳 , 溝手 博義 , 掛川 暉夫

(1992年7月18日受付)

I.内容要旨
ラット重症感染症モデル(1010E. coli/kg静注)と腹膜炎回復期モデルを用いて,グルタミン(Gln)添加TPNの効果を消化管粘膜,筋肉の蛋白合成,尿素代謝およびリンパ球増殖能,細網内皮系機能の面から評価した.
Glnはグリシルグルタミンあるいはアラニルグルタミンによって,全窒素量の25%をGlnで投与した. Gln添加TPNは従来のGlnが全く含まれないTPN液に比べて,回腸粘膜(141±17%/day vs 207±20),近位大腸(55±3 vs 65±5),遠位大腸(51±4 vs 68±7),筋肉(4.1±0.8 vs 6.2±0.4)の蛋白合成速度を改善した.血中尿素産生速度は敗血症によって有意に増加したが(88.5±4.7mg/kg/hr vs 101. 5±7.0),Gln添加TPNによって,その増加が抑制されていた(82.6±4.7). Urea N Recyclingも敗血症により増加したが(14.3±1.7mgN /kg/hr vs 18. 4±2.7),Gln投与によって減少していた(11.8±0.7). PHAとPWMによるリンパ球幼若化試験でもGln添加群が有意に良好な値を示した(PHA:169.9±27.5DPM vs 334.0±76.7,PWM: 126.6±17.4DPM vs 415.2±30.4). Congo Red投与によるphagocytic indexもGln添加群が有意に良好な回復を示していた(28.1±3.6 vs 42.3±6.7).
以上の結果から,Gln添加TPNが消化管粘膜,筋肉の蛋白合成速度を促進し,尿素代謝,リンパ球増殖能,細網内皮系の機能を改善したものと考えられ,Gln添加TPNは,重症感染症患者が多臓器不全へと移行するのを予防するために有効な輸液剤となりうる可能性が示唆された.

キーワード
重症感染症, グルタミン輸液, 蛋白合成速度, 尿素代謝, 免疫能


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