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日外会誌. 94(9): 1051-1056, 1993


原著

小動脈血行再建のための Modified composite graft : 基礎的,臨床的検討

旭川医科大学 第1外科

境 普子

(1992年3月2日受付)

I.内容要旨
人工血管と自家静脈を連結したcompositegraftは連結部に内膜肥厚(IH)を発生して閉塞する.そこで連結部にIH防止のための処理を加えたModified composite graft (MCG)を考案し,小口径代用血管としての有用性を基礎的,臨床的に検討した.MCG連結部の処理は,連結部自家静脈の1%Glutaraldehyde (GA)固定およびDardik Biograft (DB)片を用いた連結部の被覆よりなる.基礎的には雑犬の外頸静脈とDBを各々3cmずつ連結して6cmのMCGを作成し,腹部大動脈に移植した.3カ月~最長33カ月の観察で,12本中3本が閉塞し,開存率は75.0%であった.長期観察摘出標本では,宿主動脈とDBとの吻合部に種々の程度のIHを認めたが,連結部はIHが阻止され静脈のGA非固定領域から連結部をこえ,DBに向かって一層の内皮細胞の進展が確認された.臨床では,1984年以来30例の慢性下肢動脈閉塞症にMCGを適用した.適応は,救肢例66.7%,再手術例76.7%で,充分な長さの自家静脈が得られない症例に限定した.術式は大腿ー膝嵩動脈バイパス6,下腿三分岐以下へのバイパス23,大腿ー大腿動脈バイパス1である.閉塞性動脈硬化症に対する累積開存率は1年67.3%,3年31.6%,5年23.7%,救肢率は75%であった.MCGの閉塞原因は連結部IHによるものはなく中枢吻合部IH,低血流量によるグラフト血栓症であった.
MCGは連結部IHを発生せず,run-off不良例や再手術例に対しても比較的良好な早期開存率及び救肢率を示したことから,自家静脈が得られない下腿三分岐以下のlimb salvageに対し現状では最も信頼性の高い第二選択代用血管と考えられた.

キーワード
小口径代用血管, composite graft, Dardik Biograft, anastomotic intimal hyperplasia

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