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日外会誌. 94(9): 1043-1046, 1993


原著

バセドウ病手術後早期再発例の特徴

東京女子医科大学 内分泌外科

岡本 高宏 , 藤本 吉秀 , 小原 孝男 , 伊藤 悠基夫 , 飯原 雅季 , 金地 嘉春 , 山下 共行

(1992年3月30日受付)

I.内容要旨
バセドウ病手術後早期再発例の特徴を明らかにするためにこれまでに経験した症例を振り返り調査,分析した.
1981年から1989年までに当科で手術を行ったバセドウ病438例のうち,定型的甲状腺亜全摘を受けかつ必要なデータを欠いていない(欠測のない) 338例を対象とした.このうち手術後1年以内に機能亢進症が再発し内服による内科的治療あるいは131Iによるアイソトープ治療を受けたものを早期再発と定義した.術後甲状腺機能の評価は,血中ホルモン濃度測定(甲状腺ホルモンおよびTSH)によって行った.各症例について性,手術時年齢,手術適応,術前抗マイクロゾーム抗体価,甲状腺切除重量,甲状腺残置量/体表面積比を調べ,それぞれ2つのカテゴリーに分けてロジスティックモデルに投入し早期再発の特徴を検出した.
術後機能亢進症が再発し内科的治療あるいは131Iによるアイソトープ治療を受けた症例は35例あった.このうち15例が術後1年以内に再発していたが,年間再発率は術後年数に関わりなくほぽ一定であった.ロジスティックモデルによると,早期再発の特徴は,(1) 手術時年齢20歳未満,(2)甲状腺 残置量/体表面積比が大きい,あるいは,(3) 甲状腺切除重量が100g以上であり,そのオッズ比は各々20.6,16.7,3.4であった(p<0.05).
内科的に難治性であり甲状腺が大きいバセドウ病患者や若年の患者に対しては131I治療を行わない傾向にあるが,こうした患者では手術療法を行ったとしても早期に再発する危険率が高いことが判明した.若年者で甲状腺の大きい症例に対して手術を行う場合,機能亢進症から解放されることを第一の目標にし,機能低下症に陥る可能性が高くなるとしても残置量を従来(6g)より小さくするかあるいは甲状腺を全摘することを考慮してもよいのではないかと考える.

キーワード
バセドウ病, バセドウ病手術後早期再発, ロジスティックモデル


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