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日外会誌. 94(9): 993-999, 1993


原著

胃癌組織における DNA 合成系酵素活性(特に組織型と対比して)

東京医科歯科大学 第2外科(主任:三島好雄教授)

嘉和知 靖之

(1992年5月8日受付)

I.内容要旨
進行胃癌57症例において新鮮切除標本を検索し,DNA合成律速酵素であるthymidinekinase (TK. EX 2.7.1.21) およびthymidylate synthetase (TS: EC 2.1.1.45) の活性を測定した.胃の腺癌のうちpapillary adenocarcinoma (pap),well differentiated tubular adenocarcinoma (tub1)およびmoderately differentiated tubular adenocarcinoma (tub2)を高分化型それ以外を低分化型胃癌と癌分化度別に亜区分し,それぞれのTK活性,TS活性,およびDNA,RNAの比較を行った.
癌組織のTK活性は,正常粘膜のそれに比して総活性で約1.4倍と有意に高値を示した.またTK isozymeとして胎児型のものがみられ,その活性は正常粘膜のそれの約3倍の高値を示した.癌分化度別の比較では,高分化型癌では総TK活性で約1.6倍,胎児型isozyme活性で約4倍と正常粘膜に比較して高値を示した.一方,TS活性も癌粘膜では正常粘膜部分に比較して約1.2倍と有意の増加を認めた.癌分化度別の比較では,低分化型癌で約1.3倍と有意に高値を示した.すなわちTK/TS比をとると,高分化型癌では低分化型癌とは異なり,正常粘膜に比較して約1.5倍を示した.DNA,RNAについては分化度の違いによる差異は認められなかった.
以上の結果,高分化型胃癌ではsalvage経路のDNA合成が,低分化型胃癌ではde novo経路のDNA合成が優位であることが明らかとなり,したがって低分化型胃癌ではフッ化ピリミヂン系代謝詰抗剤などによる化学療法の有効なことが示唆される.

キーワード
胃癌, thymidine kinase, thymidylate synthetase, DNA, RNA

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