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日外会誌. 94(8): 816-823, 1993


原著

99mTc-DTPA-HAS シンチを用いた肝機能評価の試み

北海道大学 医学部第2外科学教室
*) 北海道大学 医学部核医学教室

大野 耕一 , 加藤 紘之 , 西部 俊哉 , 田辺 達三 , 永尾 一彦*) , 伊藤 和夫*)

(1992年2月21日受付)

I.内容要旨
肝血管床と細胞外液に分布する99mTc-DTPA-Human Serum Albumin Scintigraphy (99mTc-DTPA-HSAシンチ) を用いて得られた肝血流および肝血管床のパラメーターを従来の肝機能検査法と比較することでその有用性を検討した.肝血流は肝のtime activity curveよりSapar等の方法1)に従いHepatic Perfusion Index (以下HPI) として算出した.また肝血管床に分布する血液プール像を反映したパラメーターとして2時間後の肝,心比をHepatic Uptake Score (HUS) として算出し,従来の肝機能検査と比較検討した.
HPIは0.58±0.23 (n=37) であり肝硬変群では0.42±0.24 (n=12),非肝硬変群では0.66±0.19(n=25)と肝硬変群において有意の減少が認められた (p<0.02). HUSは0.61±0.16 (n=38) であり,肝硬変群で0.50±0.17 (n= 13),非肝硬変群で0.67±0.13 (n=25) とやはり肝硬変群において有意の減少を認めた (p<0.02).また, HPIは肝血流を反映するKICGとの間に相関係数r=0.51 (n=33,p<0.02) の有意な相関を認めた. HUSはICGR15との間に相関係数-0.49 (n=34, p<0.02), PT (%) との間に相関係数r=-0.58 (n=38, p<0.02), HPT (%) との間に相関係数r=0.52 (n=38, p<0.02),の有意の相関が得られた.さらに,門脈性亢進症に対する選択的遠位脾腎静脈シャント手術 (Distal Splenorenal Shunt : 以下DSRS) 前後でのHPI, HUSを検討するとDSRS像のHPIは術前の32~54%に低下したがHUSは保たれておりシャント手術後にみられる門脈血流の減少が肝血管床の血液プールに与える影響はそれほど大きなものではないと推測された.これらの結果より,HSAシンチを用いた肝イメージングは肝血管床の面から肝機能を反映し,臨床上有用と思われた.

キーワード
肝血流分析, 門脈血流, 肝シンチグラフィ, 肝機能検査, 選択的遠位脾腎静脈シャント術

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