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日外会誌. 94(8): 781-790, 1993


原著

固形癌由来の腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) と癌性腹水中のリンパ球 (EAL) のrecombinant Interleukin-2による活性化とその応答機構の解析

1) 東北大学 医学部第1外科
2) 磐城共立病院 外科
3) 東北労災病院 外科

伊藤 一弘1)2) , 椎葉 健一1) , 蝦名 宣男1) , 安西 良一1) , 大内 明夫1)3) , 松野 正紀1)

(1992年4月21日受付)

I.内容要旨
担癌宿主の局所防御反応に重要な役割を果たすと考えられる腫瘍浸潤リンパ球の免疫学的性状を解析する目的で,胃癌を中心とした固形癌の腫瘍間質内に浸潤するリンパ球ならびに癌性腹水中のリンパ球を分離し, recombinant interleukin 2 (rIL2 ;7 00JRU/ ml) 存在下での培養を試みた.固形癌由来のリンパ球を狭義のTIL (tumor infiltrating lymphocytes),腹水由来のリンパ球をEAL (effusion associated lymphocytes) とし, rIL2に対する反応性を解析した. TILは胃癌6例,乳癌1例の計7例より分離したが, rIL2の存在下で14日間以上の長期培養が可能であったのは2例 (28.6%) のみであった.一方, EALでは, 6例中5例 (83.3%) で長期培養が可能であった. rIL2に反応した症例ではTIL,EALともに良好な増殖を示し,強いNK活性とLAK活性が誘導され,培養開始後14日目でほぼ最高値に逹した.しかし, LAK活性は14日目以降に, NK活性は21日目以降に低下し,増殖能との解離が観察された. リンパ球表面マーカーの解析の結果,分離直後のTIL, EALはCD3陽性T細胞が過半数を占めたが, CD16陽性NK細胞はTIL中にはほとんど存在しなかった. LAK活性の誘導時期に増殖する主な細胞は, TILではCD8陽性T細胞であり, EALではCD4陽性T細胞, CD8陽性T細胞ならびにCD16陽性NK細胞であった.抗体と補体処理によるnegative selection法の結果,LAK活性を担当するエフェクター細胞は,活性化TILではCD8陽性の細胞障害性T細胞群,活性化EALではCD16陽性のNK細胞群であることが判明した.
以上より, EALは腫瘍細胞と混在する点では広義のTILと解釈されるが, rIL2に対する反応性からは腫瘍間質内の浸潤リンパ球即ち狭義のTILと異なる免疫学的性状を有することが明らかとなった.

キーワード
腫瘍浸潤リンパ球, 癌性腹水中リンパ球, レコンビナントインターロイキン2, LAK 細胞, リンパ球サブセット

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