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日外会誌. 94(8): 775-780, 1993


原著

ポリミキシン B 固定化繊維を用いた血中エンドトキシン吸着療法による敗血症の治療

滋賀医科大学 第1外科(主任教授:小玉正智)

青木 裕彦 , 谷 徹 , 花沢 一芳 , 小路 久敬 , 小玉 正智

(1992年3月17日受付)

I.内容要旨
エンドトキシンは生体に障害をもたらす強力な毒素であり,多臓器不全症の大きな原因の一つとして考えられている.エンドトキシンとの吸着機序を利用したポリミキシンB固定化ファイバー(PMX)を血液中のエンドトキシンを解毒または除去することを目的として開発し,敗血症性多臓器不全の患者16例に血液吸着を用い臨床応用した.全例安全に2時間の直接灌流による治療を行うことができ,臨床効果としてエンドトキシン濃度は治療前平均80pg/mlが,治療後には平均21pg/mlに有意に低下した.循環動態に対して,エンドトキシンショックに特徴的とされているCardiac Index 5.0 l/min/m2以上のhyperdynamicstateの症例では,治療前6.08±0.82 l/min/m2であったのが5.55±1.14 l/min/m2と有意に低下し,全血管抵抗(SVR) も同様で1,000dyne•sec•cm-5 以下の末梢血管抵抗の低い症例では,平均604dyne•sec•cm-5 が治療後に平均726dyne •sec• cm-5と有意に改善し正常化傾向を示した.解熱効果については翌日以降も効果があった.我々のPMXは,エンドトキシン濃度を低下させることによりこれらの症状を軽快させたと考えられた.今回のPMXによるエンドトキシン吸着療法により,敗血症性多臓器不全の患者16名のうち9例の症例を救命することが出来た.ポリミキシンB固定化繊維を用いたエンドトキシン吸着治療は,敗血症,敗血症性ショックに有効であると思われた.

キーワード
エンドトキシン, 吸着療法, 敗血症, ポリミキシン B, 血液灌流

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