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日外会誌. 94(7): 678-685, 1993


原著

潰瘍性大腸炎に対する結腸亜全摘 ・ 上行結腸直腸吻合術の検討

1) 都立駒込病院 外科,現 東京医科歯科大学 第1外科
2) 都立駒込病院 外科
3) 東京医科歯科大学 第1外科

岡部 聡1) , 高橋 慶一2) , 森 武生2) , 高橋 孝2) , 竹村 克二3) , 遠藤 光夫3)

(1991年8月19日受付)

I.内容要旨
最近は潰瘍性大腸炎に対する手術術式として大腸全摘・回腸肛門吻合術(IAA)を選択する施設が増えてきているが,術後の合併症や排便機能についてはいまだに問題点が少なくない.本邦の潰瘍性大腸炎の症例は欧米に比して大腸癌の合併が少なく,内視鏡診断技術の進歩によりdysplasiaや早期癌の発見も可能になってきており,術後のQOLの良好な大腸温存術式についても見直す必要があると思われる.われわれは13年間に13例の潰瘍性大腸炎の症例に対して自然肛門を温存した大腸温存術式を施行した.内訳は上行結腸直腸吻合術(CRA)が11例,回腸直腸吻合術(IRA)が2例であった.CRAの症例は全例が待期手術例で手術時の平均年齢は32歳,発症後平均13年間,術後平均5年間の経過観察を行っているが,輸血や再手術を要したり,大腸癌の発生を認めた症例はなく,少量のステロイド剤やサラゾピリンなどを用いてほぽ良好なQOLを得られている.また多発性早期大腸癌を併存した1例については切除標本のアルシアンブルー染色により癌巣の肉眼診断が容易となり,実体顕微鏡観察を行ったところ,殆どの癌巣が過形成性変化を伴っていた. CRAはIRAと比較して術後の排便機能が良好なことが多く,再手術時にIAAを選択することが比較的容易であり,また色素内視鏡を用いたfollow upにより大腸癌の早期発見が十分に可能と考えられることから,若年発症以外の潰瘍性大腸炎の症例に対して選択すべき術式と考えられた.

キーワード
潰瘍性大腸炎, 上行結腸直腸吻合術 (CRA), dysplasia

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