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日外会誌. 94(6): 625-630, 1993


原著

コンダクタンスカテーテルを用いた左室圧容積関係による術中及び体外循環中左心機能評価に関する臨床的検討

岐阜大学 医学部第1外科

森 義雄 , 村川 真司 , 東 健一郎 , 山田 拓 , 橋本 昌紀 , 広瀬 一

(1992年1月24日受付)

I.内容要旨
目的:開心術中の左心機能評価を左室圧容積関係から得られた左室Emax, 動脈一左室適合状態の指標及び機械的エネルギー効率より行い,左室Emaxを用いて従来困難とされていた体外循環(ECC)中の減負荷の状態にある時期での心機能評価に関して臨床的検討を試みた.
方法:大動脈冠動脈バイパス術症例15例を対象とした.上行胸部大動脈より左室にコンダクタンスカテーテルを留置し, ECC前後は下大静脈閉塞法にて, ECC中は送血量を変化させ,左室収縮末期圧容積関係よりEmaxを求めた.更に,動脈一左室適合状態の指標とされるEa/Ees(Ea : effective arterial elastance, Ees : end-systolic elastance),心室圧容積面積(PVA) より機械的エネルギー効率 (Eff=SW/ PVA , SW: stroke work)を算出した.左室 Emaxは, ECC前(①),ECC開始後大動脈遮断前(②),遮断解除後30分(③),遮断解除後45分(④), ドブタミン(10μg/kg/min)投与後(⑤),同量ドブタミン投与下でのECC離脱後(⑥)の各時点で計測した.
結果: ①に対する変化率(%)で示すEmaxは,②101±31, ③87±28, ④ 101±30, ⑤125±35, ⑥150±48となり,⑤⑥の時点で①と比較して有意(p<0.05)に増加した.遮断解除後のドブタミン負荷後のEmaxの増加率は, ECC中33±23%, ECC離脱後で60±38%であり,有意の正の相関(r=0.84,p<0.01)があった. Ea/Eesは,①2.14±1.36, ⑥ 1.08±0.47と⑥において有意(p<0.01)に低下し,⑥のEa/Eesと⑤のEmaxとは有意の負の相関(r=0.61, p<0.05)があった. Eff(%)は,①52±12, ⑥66±10と⑥において有意(p<0.01)に増加し,⑥のEffと⑤のEmaxとは有意の正の相関(r=0.63, p<0.05)があった.
結論: ECC離脱前の一定量のカテコラミン負荷時の左室Emaxの変化率は, ECC離脱後のEa/Eesと負の相関を,またECC離脱後のEffと正の相関を示し, ECC離脱後の心機能評価の指標になりうることが示唆された.

キーワード
開心術, 体外循環, 左室 Emax, Ea/Ees, 左室機械的エネルギー効率

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