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日外会誌. 94(6): 611-614, 1993


原著

バセドウ病手術治療の遠隔成績からみた抗 TSH 受容体抗体値の意義について

伊藤病院 
*) 日本医科大学 第2外科

杉野 公則 , 三村 孝 , 豊島 宏二*) , 尾崎 修武 , 伊藤 國彦

(1992年3月16日受付)

I.内容要旨
1983年4月から1984年3月までの1年間に当院で外科治療を行った216例のバセドウ病患者の術後遠隔成績を検討するとともにその術後機能に関与する諸因子の解析を行った.従来の報告では性, 年齢, 抗甲状腺抗体, 甲状腺重量, 残置量などが術後機能に関与するといわれていた.今回これらの他に近年, 病因として研究が進んでいる抗TSH受容体抗体 (以下TRAb) についても術後機能との関連について検討した.術後遠隔成績ではTSHが正常である正常群は30%, TSHが抑制されている再発群は18%, TSHが正常より上昇している低下群は52%であった.性, 年齢, 甲状腺切除重量と術後機能との間には有意な差は見いだせなかった.残置量は4gから8gにあったが, 6gより小さいと低下の症例が有意に増え, 6gを超えると再発の症例が有意に多かった.術前のTRAb値からは術後の機能状態を推測することはできなかったが, 術前TRAbが陰性化した症例では正常群が有意に多く, 再発群が有意に少なかった.術後のTRAb値の変動は正常群, 低下群では経年的に減少していくのに対し, 再発群では常に高値で経過していた.正常群の90%はTRAb値が陰性化したが, 再発群では60%の症例でTRAb値が正常値まで下がらなかった.術後のFollow-up中にTRAb値が上昇してくる場合には再発を考慮すべきで, TRAb値は術後のモニタリングには有用であると考えられた.しかし, 正常群でも術後早期にはTRAbは陽性である症例が多いこと, 再発群の40%の症例ではTRAbが一旦陰性化したのちに再発していることから, 術後のTRAb値の推移から予後を判断するには慎重を要する.

キーワード
バセドウ病, 手術療法, 抗 TSH 受容体抗体

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