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日外会誌. 94(6): 580-592, 1993


原著

Proliferating Cell Nuclear Antigen (PCNA) 発現率による胃癌増殖活性の評価
―その基礎的検討と臨床応用について―

昭和大学藤が丘病院 外科

中野 浩 , 生田目 公夫 , 仲吉 昭夫 , 熊田 馨

(1992年1月25日受付)

I.内容要旨
cell cycle上増殖期に特異的に出現する各種の抗原のうち, 近年注目されつつあるproliferating cell nuclear antigen (PCNA) の免疫組織化学的染色を行い, その発現率を胃癌細胞の増殖活性の指標として臨床応用することを目的に, 基礎的検討も含め報告する.
同一細胞について核DNA測定とPCNA染色を施行したところcellcycle上G1後期からS期にPCNA陽性細胞が認められた.
画像解析装置を用いたPCNA染色性の検討では, paraformaldehydeが最も良好で, 通常非緩衝ホルマリンでは判定困難であった.
エタノール固定と緩衝ホルマリン固定とについて, PCNA発現率とbromodeoxyuridine (BrdU) 標識率とを比較したところ, エタノール固定においてのみ有意な相関関係が認められた(p<0.001).
胃癌切除例44例について予後を検討したところ, PCNA発現率が高度な症例は有意差は認められないものの予後不良の傾向であった.術前化学療法例20例において, 組織学的効果判定陽性群と陰性群に分けてPCNA発現率を比較したところ, 陽性群は陰性群に比してPCNA発現率が有意に(緩衝ホルマリン固定; p<0.05, エタノール固定; p<0.001)低値であった.
術前5-FU投与例についてはthymidylate synthetase inhibition rate (TSIR)を測定し, PCNA発現率と比較したところ, 分化型腺癌症例においてTSIRとPCNA発現率との間に負の相関関係が認められた(p<0. 05).
PCNAの免疫組織化学的染色において, その対象標本の固定法はエタノール1日固定が適切と考えられた.また, 臨床例の検討よりPCNA発現率は, 胃癌の生物学的悪性度あるいは化学療法の抗腫瘍効果におけるbiological parameterとして臨床応用可能と考えられた.

キーワード
Proliferating Cell Nuclear Antigen (PCNA), Histopathological Effect of Chemotherapy, Thymidylate Synthetase Inhibition Rate (TSIR), Biological Parameter

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