[書誌情報] [全文PDF] (380KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 94(6): 575-579, 1993


原著

ドナーリンパ球門脈内投与による移植片生着延長効果の検討
―免疫抑制剤との併用効果―

京都府立医科大学 第2外科
*) 武田薬品工業 研究開発本部生物研究所

平川 一典 , 吉村 了勇 , 濱島 高志 , 大坂 芳夫 , 安井 仁 , 志甫 理*) , 岡 隆宏

(1992年2月29日受付)

I.内容要旨
ラット心移植モデル〔Brown-Norway(BN), RT-1n→ Lewis (LEW), RT-11〕を用いて, ドナーリンパ球を経門脈的に移植直後のレシピエントに投与し, 移植心の生着廷長効果を検討するとともに, 免疫抑制剤FK506またはモノクロナール抗T細胞抗体OX19との併用効果の有無について検討した.移植モデルを次の6群に分けて実験を行った. A) コントロール群, B) FK506(0.2mg/kg/day, -1, 0, 1 day) を筋注する群 (FK506群), C) 移植直後にBNリンパ球1×108を門脈内投与する群 (PV群), D) FK506 (0.2mg/kg/day, -1, 0, 1 day, i.m.)および移植直後に, BNリンバ球1×108個を門脈内投与する群 (FK506+PV群), E) OX19 (250μg/day, -1, 0, 1 day)を静注する群(OX19群), F) OX19 (250μg/day, -1, 0, 1 day, i.v.) および移植直後に, BNリンパ球1×108個を門脈内投与する群 (OX19+PV群).コントロール群の平均生着日数は7.3±0.3日であったのに対し, PV群では平均11.2±1.0日と, 有意(p<0.05)に生着期間が延長した. FK506群では平均12.4±1.0日とコントロール群に比べ有意に生着が延長した(p<0.01). 一方, FK506+PV群では10.6±0.8日とコントロール群に比べ有意に生着は延長しているものの(p<0.01), FK506群およびPV群に比べて有意差はなく相乗効果は認められなかった. OX19群の平均生着日数は17.2±2.1日(n=5) とコントロール群に比ベ延長効果(p<0.01)を認めた.一方, OX19+PV群では平均15.0±1.2日とコントロール群に比べ有意な生着延長(p<0.01)を認めたが, OX19群に比べて有意差はなく相乗効果は認められなかった.移植後7日目のPV群及びFK506+PV群の血清をBN-LEW間のリンパ球混合培養反応(MLR)に最終濃度が6%になるように加えたところ, 正常LEWラットより得られた血清に比べ, PV群では92.7%と強い抑制活性が認められたのに対し, FK506+PV群では5.8%と抑制活性は減少していた.以上の結果よりFK506+PV群に相乗効果が認められなかったのはドナーリンパ球門脈内投与によって誘導される血清中抑制因子の産生がFK506により抑制されているためであり, またこの因子の産生はT細胞に依存していることが示唆された.

キーワード
ラット心移植, ドナーリンパ球門脈内投与, FK506, モノクロナール抗 T 細胞抗体, 相乗効果


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。