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日外会誌. 94(6): 569-574, 1993


原著

手術侵襲による α-hANP の分泌動態について

藤田保健衛生大学 内分泌外科

辻村 享 , 岩瀬 克己 , 川瀬 恭平 , 宮川 秀一 , 大谷 享 , 稲垣 朝子 , 三浦 馥

(1991年12月27日受付)

I.内容要旨
手術侵襲によるα-hANPの分泌動態を検討する目的で, 術前後の血漿α-hANPの推移を観察し, その分泌に影響する要因について検討した.
対象は, 心, 腎, 肝疾患等の合併症がなく大量の輪液輸血を必要としない開腹術例17例(胆石症6, 胃癌8, 大腸癌3), 非開腹術例18例(甲状腺腫瘍13, 乳癌5)の合計35例である.採血は術前, 術直後, 第1, 3, 5, 7病日に行い, 血漿α-hANPの他にアドレナリン, AVP, アルドステロン, レニンの測定を施行した.
血漿α-hANPの経時的推移は, 検索対象全例では第1病日に上昇, 第3病日には正常値上限に低下, その後次第に術前値に復した.開腹群, 非開腹群の比較では, 第1病日の血漿α-hANPの上昇は開腹群により著明であった.この分泌の刺激要因の検索でアドレナリンの推移が良好な相関を示した.AVP, アルドステロン, レニン, 年齢, 性差, 手術時間, 出血量, 術中輸液量は, いずれも有意な相関は認められなかった.
以上の結果より血漿α-hANP濃度の術後初期の上昇は, 手術侵襲の大きさに相関するものと思われ, カテコラミンの変動との関連が伺われた.

キーワード
心房性ナトリウム利尿ペプチド, α-hANP, 手術侵襲, 体液変動

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