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日外会誌. 94(5): 511-515, 1993


原著

高齢者真性胸部大動脈瘤の手術成績と問題点

神戸大学 第2外科
*) 三木市民病院 
**) 公立御津病院 

山下 長司郎 , 中村 和夫**) , 岡田 昌義 , 山本 信一郎 , 中村 宏臣*)

(1991年12月19日受付)

I.内容要旨
過去11年間に神戸大学及び三木市民病院で手術を行った胸部大動脈瘤は90例であったが, このうち真性下行大動脈瘤25例及び胸腹部大動脈瘤9例の計34例を70歳以上の1群12例と, 69歳以下の2群22例に分け術前合併症, CT上の所見, 術中因子, 手術成績などについて比較検討した.術前合併症は1, 2群とも動脈硬化性疾患の合併が多く, 2群では腎機能障害が多く認められた. CT上動脈瘤の最大径は1群7.3±0.3cm, 2群6.7±1.6cmと差がなかったが, 動脈瘤前後の胸部大動脈の半周から全周に石灰化がある頻度をみると1群82%, 2群13%と1群では2群に比べ明らかに大動脈壁の石灰化が著明であり高度の内膜変化を疑わせた.大動脈遮断時間は1群72.5±27.3分, 2群60.3±25.3分と差がなかったが, 中枢側大動脈遮断を左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で行った症例が1群では6例(50%)もあった.手術成績は1群では12例中5例(41%)が術後1カ月以内に死亡した.死因は術中大動脈解離, 術中心筋梗塞, 術中脳梗塞, 術翌日SMA塞栓による腸壊死及び肺炎であった. 2群では22例のうち, 破裂例の2例を除く20例の手術死亡は急性腎不全の1例のみであり良好な成績であった.結論70歳以上の高齢者胸部大動脈瘤では直逹的な手術侵襲による合併症で死亡しており, 大動脈遮断操作の工夫などにより手術成績は更に改善するものと思われる.

キーワード
高齢者手術, 胸部大動脈瘤, 手術成績, 術後合併症

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