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日外会誌. 94(5): 466-474, 1993


原著

肝切除術後のエンドトキシン血症における血小板活性化因子の関与とその拮抗剤の効果に関する実験的研究

1) 浜松医科大学 第2外科
2) 浜松医科大学 第2病理

大貫 義則1) , 中村 達1) , 室 博之2) , 馬場 正三1)

(1991年11月29日受付)

I.内容要旨
大量肝切除後に致死量以下のエンドトキシン(ET)血症がもたらす高死亡率における血小板活性化因子の関与について実験的に検討した.ラットに70%および84%肝切除後, 34%肝切除において100%生存するET量1mg/kg体重を致死量以下の量として経静脈的に投与し, ETのみ投与群と血小板活性化因子拮抗剤(PAF-A)の前投与群を比較した. ETは肝切除後1, 3, 5日目に(1回/匹)投与し, PAF-AはET投与10分前に投与して, ET投与1週間後の生存率を求めた. 84%肝切除後3日目ET投与群は生存率20%と最も低かったが, PAF-Aの前投与により生存率は80%に有意に改善した(p<0.01).そこで84%肝切除後3日目のET群およびPAF-A前投与群の病態について詳細に検討した.(1)GOT, GPT, 血糖値の変動に有意差は認められなかった.(2)プロトロンビン時間はET群で有意に延長し(p<0.01), フィブリノーゲンはET群においてPAF-A群より有意に低値を示した(p<0.05).血小板は両群ともに減少したが, 有意差はみられなかった.(3)ET群で死亡したものは, ET投与後4~6時間目, 急に血圧が低下して死亡した.しかし, PAF-Aを投与した群では血圧下降を認めなかった.(4)肉眼的に, ET群では8例中6例に血性腹水を認めたが, PAF-A群にはなかった.病理組織学的に, ET群は, 肝細胞壊死と, 腎糸球体にフィブリン血栓を認め, DICの所見を呈していた.肺には死亡例でうっ血および肺水腫を認めた. PAF-A前投与群は, 肝細胞壊死の発生は抑制されていたが, 腎糸球体にはフィブリン血栓を認め, DIC所見の軽減はわずかであった.肺のうっ血は軽度に認めるのみであった.
大量肝切除術後のET血症においてPAFが関与した病態が発生すると考えられ, これに対してPAF-Aを投与することにより肝細胞壊死とDICを軽滅し, 循環不全や血性腹水を防止して有意に生存率を改善することができた.

キーワード
肝切除, エンドトキシン血症, 血小板活性化因子

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