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日外会誌. 94(5): 456-465, 1993


原著

食道癌手術視野からみた気管支動脈の走行に対する解剖学的検討

1) 千葉大学 医学部第2外科
2) 千葉大学 医学部第1解剖

舟波 裕 , 奥山 和明 , 唐司 則之 , 小出 義雄 , 小野田 昌一1) , 嶋田 裕2) , 磯野 可一1)

(1991年12月13日受付)

I.内容要旨
1991年に千葉大学医学部にて解剖学実習が行われた51体中, 気管支動脈の走行を剖出しえた38体について, 食道癌手術視野からみた気管支動脈の走行に対する解剖学的検討をおこなった.
38体の気管支動脈の本数は右が68本, 左が61本であった.また, 1体が有する気管支動脈の本数は右が2本で, 左が2本の場合が14体 (36.8%) と多く, ついで右が2本で, 左が1本の場合が13体 (34.2%) であった.
右気管支動脈のうち右肋間動脈よりの分岐(肋間気管支動脈)は38体全例に各1本ずつみられた.また大動脈よりの分岐は38体中29体 (76.3%) に認め, そのうち28体は各1本, 1体は2本の分岐を有した. さらに大動脈よりの分岐後, 左気管支動脈をも分岐する左右共同幹は19体 (50.0%) に各1本を認めた.大動脈よりの分枝30本の走行をみると, 全例が気管分岐部リンパ節の領域を走行しており, 同部リンパ節をen blocに郭清する際の, 大動脈分岐枝温存の困難性と共に, 右気管支血流温存のためには, 肋間気管支動脈の温存が重要であると感じられた.
左気管支動脈は61本全例が大動脈より分岐していた.左気管気管支リンパ節の領域を走行する例は32体 (84.2%) であり, 内24体に各1本, 7体に各2本, 1体に3本を, また気管分岐部リンパ節の領域を走行する例は5体 (13.2%) に各1本を認めた.すなわち, 同部リンパ節をen blocに郭清する際には, 左気管支動脈を損傷する可能性の高いことが考えられた.一方, リンパ節より離れて走行する例は, 左気管支と交差する高さで下行大動脈より分岐する16体 (42.1%) に19本が認められ, 温存することのできる可能性が考えられた.同部操作時のより注意深い配慮の必要性があると感じられた.

キーワード
気管支動脈, 食道癌手術, 気管分岐部リンパ節, 左気管気管支リンパ節, 肉眼解剖

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