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日外会誌. 94(5): 449-455, 1993


原著

侵襲下の生体でウリナスタチンはヒト顆粒球エラスターゼのインヒビターとなりうるか?

筑波大学 臨床医学系外科

石川 詔雄 , 深尾 立 , 辻 勝久 , 長田 明 , 山本 祐二 , 岩崎 洋治

(1991年12月27日受付)

I.内容要旨
生体に対する高度の侵襲下で, 顆粒球より遊離したpolymorphonuclear granulocyte elastase (PMNE) は, 血中に多量に存在しているα1-プロテアーゼ・インヒビター (α1-PI) と安定したコンプレックスを形成して不活性化された状態で存在する. しかしこのような状況下で, ヒト生体内に存在するトリプシン・インヒビターであるウリナスタチン(UST)のPMNEに対する阻害作用とα1-PI存在・非存在下でのUSTのPMNEに対する阻害機構については, 充分検討されていない.
そこで白血球酵素溶液による血漿フィブロネクチンの分解作用に対するUSTの影響を検討し, さらに炎症の局所および循環血中を考えたin vitroの反応系モデルでPMNEに対するUSTの阻害機構について検討した.
血中の全顆粒球のPMNEが放出された場合に匹敵する高濃度のPMNEに対して, USTはclinical doseに相当する血中濃度領域において十分な活性阻害効果およびフィブロネクチン分解抑制効果を示した.またPMNEの酵素活性は, USTの濃度に依存して阻害された. PMNEに対するα1-PIとUSTとの親和性を比較した循環血中モデルの検討において, PMNEに対してUSTを最初に反応させたにもかかわらず, あとで加えたα1-PI によりPMNE•UST コンプレックスは, PMNE・α1-PIコンプレックスに置換された.しかし炎症の局所でα1-PI不足の状態では, 今回の局所モデルの検討でもUSTは, 直接PMNEの活性を阻害することが再確認された.
以上の検討よりUSTとα1-PIおよびPMNEの関係をみると, UST投与下では炎症の局所においてα1-PIが失活しても, USTがα1-PIのかわりにPMNEを阻害する.そのため血中へのPMNEの放出が減少するので, 血中のPMNE• α1 -PIコンプレックス測定値が低下することが明らかになった.

キーワード
顆粒球エラスターゼ, トリプシンインヒビター, α1-プロテアーゼインヒビター, フィブロネクチン, ウリナスタチン

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