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日外会誌. 94(3): 277-284, 1993


原著

穿刺吸引細胞標本を用いた乳癌細胞核 DNA 定量

群馬大学 医学部第2外科

栗原 照昌 , 横江 隆夫 , 飯野 佑一 , 石田 常博 , 森下 靖雄

(1991年11月13日受付)

I.内容要旨
穿刺吸引法による細胞核DNA定量の有用性を, 組織標本の核DNA量と比較することで検討した.対象は乳癌原発巣28例とリンパ節転移巣2例の30例で, 核DNA定量にはFeulgen染色による顕微蛍光測光法を用いた.穿剌吸引標本と組織標本のDNA ploidyの一致率は86.7%で, DNA index (DI)では両者間に正の相関がみられた(r=0.85, p<0.001).また, DI値により, aneuploidを3 subgroupに亜区分し, これらにdiploidを加えた各subgroupでの両者の一致率は80.8%であった.S期細胞分画(%S)では, 両者間に正の相関がみられたが(r=0.79, p<0.001), DIに比ベバラツキがやや多く, 10%単位ごとに区分した小範囲内での両者の一致率は60.7%であった.腫瘤径, 組織型による両者の誤差を検討した結果, %Sは乳頭腺管癌で誤差がやや大きかったものの, DIは組織型による影響を受けなかった.また, 腫瘤径によってDI, %Sはいずれも大きな影響は受けなかった.以上の結果から, 穿刺吸引細胞による核DNA量は, 組織標本の値と有意に相関し, DNA ploidy patternに限らず, ある一定の幅をもったDIの推定が可能であった.穿刺吸引法は簡便で, 反復して行えることからも, 穿刺吸引標本を用いた核DNA定量の今後の幅広い臨床応用が期待できる.

キーワード
核 DNA 量, DNA ploidy, 穿刺吸引細胞標本, 穿刺吸引法, 乳癌


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