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日外会誌. 94(3): 242-249, 1993


原著

エンドトキシンショック時の肝細胞障害発生機序に関する実験的研究
-とくに多核白血球の関与について-

日本医科大学 外科学第1教室(指導:恩田昌彦教授)

石川 紀行

(1991年10月25日受付)

I.内容要旨
エンドトキシン (以下ET) 血症時に認められる肝細胞障害発生機序に, ETにより活性化された多核白血球 (以下PMN) が関与しているものと考え, ラットETショックモデルを作成し, 51Crをラベルした正常肝細胞(target cell) とET投与および非投与ラット末梢血PMN (effector cell) を混合培養し51Cr release assay法による肝細胞障害性をET投与前およびET投与後6, 12, 24時間と経時的に検討した.また同時に, 肝循環動態の有力な指標となるとされている血中GLDHの変動, 肝臓の組織形態学的変化, および末梢血PMNの活性酸素 (以下O-2) 産生能ならびに貪食能を調べ, 以下の結論を得た.
(1)血漿中GLDHはET投与前値(6.6±2.0IU/L)に較べて, ET投与後6時間では16±5IU/Lと上昇し, 12時間では121±21IU/Lと最高値を示したが24時間には14±4IU/Lと低下した.
(2)肝臓の組織形態学的変化はET投与後6時間で肝細胞障害およびPMNの肝臓内への浸潤は軽度認められ, 12時間に至るとこれらの変化はより著明となったが, 24時間ではほとんどみられなかった.
(3)末梢血 PMNのO-2産生能は ET投与後 6時間では ET投与前値 (25±5×104 counts/2 ×105/4min) とほぼ同様であったが, ET投与後12時間では44±5×104 counts/2 x 105/4minとET投与前値の2倍のO-2産生能を示した.
(4) ETショックラットPMNの貪食能はET投与後6時間で有意に低下したが, 12時間後にはET投与前値に復していた.
(5)末梢血PMNの肝細胞障害性は, ET投与前では認められなかったが, ET投与後6時間ではT : E= 1 : 25のみ, 12時間では T : E= 1 : 10 , 1 : 25でさらに高い障害活性が認められた.
以上より, ETショック時の肝細胞障害の発生には微小循環障害に加え, ET活性化PMNが重要な役割を果たしていることが示唆された.

キーワード
多核白血球, エンドトキシンショック, GLDH, O2, 肝細胞障害

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