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日外会誌. 94(3): 213-224, 1993


原著

各種固形癌由来腫瘍浸潤リンパ球の rIL-2による活性化と抗腫瘍活性担当細胞の解析

東北大学 医学部第1外科

石井 誠一 , 椎葉 健一 , 蝦名 宣男 , 松野 正紀

(1991年10月4日受付)

I.内容要旨
担癌生体の抗腫瘍免疫応答として注目される腫瘍浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocytes; TIL)の性状を明らかにするため, 腎癌, 消化器癌などの各種固形癌46例からTILを分離し, recombinant interleukin-2 (rIL-2) 1,000U /mlの添加培養により活性化TILを誘導した.得られた活性化TILの自己および非自己の癌細胞に対する細胞障害活性を4時間の51Cr release assayで測定し, リンパ球表面マーカーの変動をflow cytometry法で解析した.また, 活性化TILを抗体と補体で処理して, 抗腫瘍活性担当サブセットの解明を行なった.活性化TILの誘導は46例中41例(89.1%)で可能であった.活性化TILの自己癌に対する%細胞障害活性(E/T比20)は, 腎癌の23.8±4.3%(n=16)に対し, その他の癌は10.4±2.6%(n=15)であり, 腎癌由来の活性化TILで有意に高値を示した(p<0.005).非自己癌に対する活性およびNK活性, LAK活性も腎癌由来の活性化TILで有意に高値であった.しかし, 活性化TILは由来臓器の如何によらず非特異的細胞障害活性を呈し, 自己癌に対する標的細胞特異性は認められなかった.リンパ球表面マーカーの解析では, 分離時のTILはCD3+のT細胞が主体であったが, 培養後のTILのPhenotypeは由来臓器により異なる変動を示した.活性化TILの細胞障害活性はLeu19の陽性率と正の相関を示したが, CD3, CD16の陽性率とは相関しなかった.抗体+補体処理によるeffector細胞の解析においても, 活性化TILの抗腫瘍活性はLeu19抗体+補体処理で強く抑制されたのに対し, 抗CD3抗体, 抗CD16抗体+補体処理ではほとんど影響されなかった.以上より, rIL-2の添加培養により誘導された活性化TILは非特異的な細胞障害活性を有し, その抗腫瘍活性はCD3・ CD16・ Leu19のNK細胞由来のサブセットに最も強いことが示された.また, CD3+のT細胞サブセットも存在するが, 検出可能な抗腫瘍活性を発現していないものと考えられた.

キーワード
腫瘍浸潤リンパ球(TIL), 細胞障害活性, リンパ球サブセット, flow cytometry 法, effector 細胞


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