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日外会誌. 94(2): 177-181, 1993


原著

甲状腺未分化癌株における増殖能と DNA ploidy

神奈川県立がんセンター 外科2科
*) 神奈川県立がんセンター 臨床研究所2科
**) 神奈川県立がんセンター 臨床研究所1科

吉田 明 , 麻賀 太郎 , 増沢 千尋 , 河原 悟 , 矢野間 俊介*) , 清水 昭男**) , 原田 昌興**)

(1991年10月1日受付)

I.内容要旨
近年多くのヒト腫瘍に於いて核DNA量の検討がなされ, DNA aneuploidyが悪性度の指標と成り得ることが指摘されている.甲状腺癌においても同様な報告がみられるが, 極めて予後不良な未分化癌でもすべてがaneuploidyを示す訳ではない. そこでヌードマウス移植甲状腺未分化癌3株(TTA-1, TTA-2, TTA-3)を用い, その増殖能, DNA ploidyおよび染色体異常の有無について検討した. ヌードマウスにおける腫瘍倍加時間およびbromodeoxyuridineのlabeling indexはTTA-1 ; 6.3日, 17.3% , TTA -2 ; 9. 0日, 11.4%, TTA-3 ; 4.8日, 25.1%であり各腫瘍によりその増殖能は可成り異なっていた.比較的増殖の速いTTA-1, TTA-3はDNA histogram上, diploidあるいはnear diploidを示すものであったが, Gバンド法による染色体解析では, これらの腫瘍に多くの染色体構造異常が認められた.一方, 増殖の遅いTTA-2はaneuploidを示すものであったが, 染色体の構造異常は少なく, 染色体数の増加のみが目立っていた.これらの結果はDNA ploidyで腫瘍の生物学的性状を検索する場合の限界を示唆するものであり, 核DNA量に加え染色体の質的異常を検索する事が重要と考えられた.

キーワード
甲状腺未分化癌, nude mouse, 増殖能, DNA ploidy, 染色体異常


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