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日外会誌. 94(2): 165-176, 1993


原著

食道胃静脈瘤の内視鏡的分類に基づく血行動態と治療成績に関する臨床的検討

福岡大学 医学部外科第1

白井 善太郎

(1991年8月26日受付)

I.内容要旨
食道胃静脈瘤症例262例の治療経験より内視鏡所見を
Type I:食道静脈瘤症例, Type II:食道胃噴門部静脈瘤症例, Type III:胃穹窿部静脈瘤症例の3型に分類し, 腹部血管造影をもとに血行動態を検討した.その結果, 著者らの内視鏡的分類は食道胃静脈瘤の血行動態と密接な関連性があり, 治療方針の決定に極めて有用と思われた.すなわち,
1. Type I 症例の76.7%, Type II 症例の88.9%に左胃動脈造影にて食道静脈瘤が描出された.
2. Type II 症例では, 左胃動脈造影にて48.1%, 門脈造影にて58.1%で, 胃噴門部静脈瘤が描出され, うち食道静脈瘤への連続性が認められた症例は, 72%と大部分であった.
3. Type IIIでは左胃動脈から胃穹窿部静脈瘤が描出された症例はなく, 全例門脈造影にて描出された.
また, 大部分の症例で排出路としての胃一腎静脈短絡を認めたが, 胃穹窿部静脈瘤から食道静脈瘤が連続的に描出された症例はなかった.
4. Type IとType IIの血行動態は類似しており, 胃噴門部静脈瘤もType Iに対する食道静脈瘤側からの内視鏡的硬化療法で治療可能と思われた.
一方, Type IIIにおける胃穹窿部静脈瘤の血行動態はType I, Type IIと異なり, その治療にはHassab手術が有用と思われた.
5. Type I, Type IIに対する内視鏡的硬化療法, Type IIIに対するHassab手術の治療成績は, 緊急止血率90%以上, 静脈瘤消失率80%以上, 治療後5年間の累積出血率15%以下と良好であった.

キーワード
食道胃静脈瘤, 内視鏡分類, 門脈造影, 左胃動脈造影, 治療成績

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