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日外会誌. 94(2): 159-164, 1993


原著

先天性胆道閉鎖症患児の非特異的免疫能, 特に好中球 superoxide 産生能と opsonin 活性について

*) 群馬県立小児医療センター 外科
**) 群馬大学 医学部第1外科

黒岩 実*) , 松山 四郎*) , 長町 幸雄**)

(1991年8月17日受付)

I.内容要旨
先天性胆道閉鎖症患児(以下CBA)術後に高率に発生しCBAの予後に重大な影響を与える上行性胆管炎の発生原因として好中球機能異常が示唆されている.我々は好中球殺菌過程のうち, 貪食に深い関わりのある血清オプソニン活性, 好中球の酸素依存性殺菌に重要なO2-産生能, Myeloperoxidase (MPO) 活性を反映するOCL-産生能及びオプソニンである血清補体およびFibronectinについて検討した.
対象は術後のCBA 10例で, 基礎疾患のない小手術の術前症例21例を対照とした.
血清オプソニン活性, O2- (MCLA-CL) 及びOCL-産生能 (L-CL) は化学発光法, 補体は一元免疫拡散法, Fibronectinは免疫比濁法にて測定した.
MCLA-CLすなわち O2- 産生能はCBAで30.7±4.5万counts/min (cpm), 対照では37.4±4.4万cpmでCBAで有意に低値であったが, MPO活性を反映するL-CLでは両群間に差はなかった.血清オプソニン活性 (9.8±3.7万cpm vs 10.8±3.7万cpm) 及びFibronectin (225.7±32.6μg/dl vs 209.5±64.5μg/dl) にも二群間で有意な差は認められなかった.血清補体のうちC3及びC3Aは両群間に差はなかったがC4はCBAで有意に低値を示した (19.5±3.6mg/dl vs 24.1±5.6mg/dl).
以上の結果からCBAの術後に上行性胆管炎が高率に発生する原因としては, 血清オプソニン活性低下による接合・貪食能の障害はむしろ否定的で, 好中球自体の酸素依存性殺菌の障害, とりわけ活性酸素種の出発物質である O2-産生能が低下しているためと考えられた.同時に, 血清C4低下によるclassical pathwayの活性化の障害が関与する可能性が示唆された.

キーワード
先天性胆道閉鎖症, 上行性胆管炎, superoxide anion, 酸素依存性殺菌, オプソニン


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