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日外会誌. 94(2): 147-154, 1993


原著

ラット移植肝浸潤細胞の解析

京都府立医科大学 第2外科

大坂 芳夫 , 指導:岡 隆宏教授 

(1991年9月9日受付)

I.内容要旨
近交系ラット肝移植モデルにおける免疫学的特異性解明のため長期生着モデル (BN, RT-1n→LEW, RT-11) および早期拒絶モデル (DA, RT-1a→ LEW) を用いてグラフトに浸潤する細胞を単離し, 表面抗原, 細胞傷害活性を解析した.
長期生清群と早期拒絶群の移植肝浸潤細胞 (肝GIC) を術後6日目に単離し, モノクローナル抗体陽性率をフローサイトメトリーで測定した. OX-19陽性細胞 (T細胞) は早期拒絶群で57.8±2.8%と長期生着群の41.5±5.1% に比し有意に高率であった (p<0.05).また活性化T細胞の表面マーカーであるOX-26およびOX-39陽性細胞は早期拒絶群でそれぞれ5.7±0.5%, 25.3±5.9% と長期生着群の3.0±0.6%, 14.3±2.7% に比べ有意に高率であった (p<0.05). OX-8陽性細胞 (TS/C, NK) およびW3/25陽性細胞 (Th) は早期拒絶群でそれぞれ69.6±1.3%, 21.5±3.6%と長期生着群の67.8±8.5%, 20.9±3.6%と比較して有意差は認められなかった.長期生着群の6日目, 14日目, 45日目の肝GICの表面抗原を比較すると6日目, 14日目に比べ45日目にはOX-19, OX-8, およびOX-39陽性細胞の比率が有意に減少した. また肝GICのドナーリンパ球に対する細胞傷害活性は早期拒絶群で18.9±4.0% (E/T=50) と長期生着群の5.3±2.8% に比し有意に高値であった (p<0.01). また移植後6日目の肝GIC表面抗原陽性率でOX-8陽性細胞とW3/25陽性細胞の総和がOX-19陽性細胞に比しはるかに高率であることよりNK細胞の増加を予測し, YAC-1を用いて腎GICとの問でNK活性を比較すると肝GICでは17.5±3.0% (E/T=100) と腎GICの2.3±0.5% に比し有意に高い値を示した. 以上の結果より移植肝ではキラーT細胞が拒絶反応の主役を担っており, 長期生着群では移植後6日目にすでに何らかの免疫抑制因子がキラーT細胞の浸潤や活性化を抑制している可能性が示唆された.

キーワード
ラット, 肝移植, 浸潤細胞, 表面抗原, 細胞傷害活性

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