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日外会誌. 94(1): 71-77, 1993


原著

クリップを用いた内視鏡的乳頭括約筋形成術に関する基礎的研究

*) 九州大学 第1外科
**) 福岡大学 第1外科

松本 伸二*) , 池田 靖洋**) , 田中 雅夫*) , 吉本 英夫**)

(1991年8月5日受付)

I.内容要旨
外科的乳頭括約筋形成術に匹敵する非手術的治療法として, クリップを用いての内視鏡的乳頭括約筋形成術を考え, その臨床応用にむけ基礎的研究を行った.雑種成犬を用い, 開腹下に十二指腸主乳頭を露出し, 内視鏡的乳頭括約筋切開術に準じて切開ナイフにて十二指腸壁内胆管を全長にわたり切開し, 肝十二指腸間膜への穿孔を確認.その後, 壁内胆管と十二指腸粘膜を①クリップにて咬合したもの(クリップ群), ②絹糸にて縫合したもの(絹糸群), ③そのまま無処置としたもの(穿孔群)の3群(計36頭)を作成し, クリップの穿孔防止効果・止血効果・創傷治癒状態を中心に検討した.
①クリップの脱落および止血効果.クリップの脱落は, 29個中6個(21%)であり, このうち1週間以内の脱落は5個(17%)であった.クリップの脱落原因としては, 初期のクリップ自体の不良と手技上のミスを除くと, 術後3~4週目にみられた1個(3%)のみであった.またクリップは切開時にみられる動脈性出血やoozingに対しても良好な止血効果を示した.②クリップ群・絹糸群の乳頭開口部はkey hole状を呈し, ともに良好な創傷治痘を示し, 切開創の完全な上皮化には1~ 2週間を要した.組織学的にはクリップ群は絹糸群に比し, 異物巨細胞や炎症細胞の浸潤は軽度であった.一方, 穿孔群では25%が穿孔により死亡し, 75%に乳頭狭窄を認めた.③血液生化学検査上, クリップ群・絹糸群ともに出血・胆管炎・膵炎を示唆する所見はみられなかった.クリップは絹糸と同等の効果を有し, 今後クリップによる内視鏡的乳頭括約筋形成術の臨床応用が期待される.本法を用いて, 15mmのバルーンが通過する開口が得られた臨床例を供覧した.

キーワード
内視鏡的乳頭括約筋切開術, 乳頭括約筋形成術, クリップ


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