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日外会誌. 94(1): 57-65, 1993


原著

肝腫瘍凍結治療後の抗腫瘍免疫活性の誘導とその強化に関する実験的研究

東邦大学 医学部第1外科

花輪 茂樹

(1991年7月17日受付)

I.内容要旨
MRMT-1腫瘍を用いたラット肝癌モデルにおいて, 肝腫瘍に対する凍結手術の効果と宿主免疫能に与える影響を検討した.また, 免疫賦活剤併用による凍結免疫強化についても検討した.本研究では凍結条件, 免疫賦活剤併用の有無によりラットを対照群(n=5), 偽手術群(n=5), 不完全凍結群(n=7), 完全凍結群(n=11), OK432併用群(完全凍結群との併用, n=10)の5群に分類した.これらについて生存日数, 末梢血リンパ球幼若化反応, リンパ球サブセット分析を経時的に測定し, 以下の結果を得た.①凍結手術による有意な延命効果は不完全凍結群(77.1±16.9日)でのみ認められ, 完全凍結群, OK432併用群では早期死亡例がみられた.② PHAリンパ球幼若化反応は, 術後8週での不完全凍結群(49.5±29.2SI), OK432併用群(95.2±28.3 SI)で有意に上昇した.③リンパ球サブセット分析では, 不完全凍結群でのCD4陽性T cellが術後8週で56.6±3.5%と有意に上昇した.これに対し, 完全凍結群では術後3日で有意に低下(43.1±5.5%)し, さらに術後2週でのCD8陽性T cellの有意な上昇(42.7±2.9%)もみられた.しかし, OK432併用でこの上昇は有意に抑制(31.8±4.1%)された.④完全凍結群における早期死亡例では, PHAリンパ球幼若化反応(2.6±1.7 SI) とCD4陽性T cell (38.4±1.5%)の有意な低下がみられた.以上の結果より, 肝腫瘍に対する凍結術後の免疫反応には, 腫瘍の破壊程度により増強と抑制の2面性が認められた.増強の場合は, 4~8週にリンパ球機能とhelper T cell陽性率の上昇により誘導され, 抑制の場合は, 術後早期にはリンパ球機能, helper T cell陽性率の低下, その後はsuppressor T cell陽性率の上昇により誘導されると考えられた.さらに, 免疫賦活剤併用ではリンパ球機能の上昇, suppressor T cell抑制による凍結免疫強化の可能性が示され, 集学的治療の1方法として凍結手術の有効性が示唆された.

キーワード
肝凍結手術, 凍結術後宿主免疫反応, 末梢血リンパ球サブセット, 凍結免疫強化, ラット肝癌モデル

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