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日外会誌. 94(1): 41-49, 1993


原著

BrdU 標識率を用いた胃癌細胞動態の臨床的研究
-DNA ploidy pattern, EGF との関連性-

昭和大学 外科(主任:小池 正教授)

津嶋 秀史

(1991年7月16日受付)

I.内容要旨
胃癌の生物学的悪性度を調べるために, BrdU標識率(Labeling Index, 以下L.I.)と病理組織学的所見を比較検討し, DNA ploidy pattern, EGFとの関連性についても検討した.40例の新鮮胃癌切除標本より検体を採取し, BrdUをラベル後免疫染色を行い, 癌細胞1,000個に対するBrdU陽性細胞の比率をL.I.とした.EGFは, 同症例についてEGF陽性率を検討した.核DNA量の測定は, flow cytometerを用い, diploidとaneuploidに大別した.
L.I.は癌の中心部に比し先進部で有意に高値を示した.組織学的には, p(+)群, n(+)群, ps(+)群, INFγ群, 硬性型, 深部拡大型, 病期の進行したもので有意に高値を示し, L.I.は癌の浸潤, 増殖, さらには転移にも関与し, 悪性度の指標になると考えられた.
EGF陽性率は, ps(+)群, 深部拡大型, L.I.が高値のものほど高い傾向があり, EGFは, 癌の浸潤様式, 深層への進展に関与すると考えられたが, P因子, n因子とは相関しなかったことから, 転移には関与しないものと考えられた.
DNA ploidy patternは, 組織学的所見, L.I., EGF陽性率すべて有意差はみられなかった.しかし, ps(+)群, ps(-)群に分け, L.I.を比較すると, aneuploidの癌ではps(+)群でL.I. が有意に高値を示したのに比し, diploidの癌ではこのような傾向はみられなかった.腫瘍の増殖期間中, L.I.は一定であり, L.I.が増殖速度にも相関するという報告に基づけば, ps(+)という進行した状態で発見された癌の中で, aneuploidの癌は, 増殖速度が速く, 短期間に進行癌に発育したものと考えられ, このような癌は悪性度が高いことが示唆された.しかし, 癌細胞の多様性, あるいはheterogeneityの問題等もあり, 今後症例を増やして検討する必要があると考えられた.

キーワード
Bromodeoxyuridine, DNA ploidy pattern, Epidermal growth factor, 胃癌, 細胞動態


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