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日外会誌. 94(1): 33-40, 1993


原著

胃癌における c-erbB-2蛋白発現についての免疫組織化学的研究

神戸大学 医学部第1外科学教室

島田 悦司 , 加藤 道男 , 斎藤 洋一

(1991年6月27日受付)

I.内容要旨
切除胃癌130例を対象として, c-erbB-2蛋白発現を免疫組織化学的に検索し, 臨床病理学的所見ならびに術後遠隔成績との関連について検討した.
c-erbB-2蛋白陽性所見は130例中36例(27.7%)にみられ, 組織型別陽性率はpap, tubl, tub2などの分化型は78例中31例(39.7%)で, por, sig, mucなどの未分化型52例中5例(9.6%)と比較して高率であった(p<0.001).深達度別陽性率では, 早期癌26例中2例(7.7%)に対して進行癌は104例中34例(32.7%)と高率であった(p=0.007).すなわちc-erbB-2蛋白発現は分化型癌, とくに分化型進行癌に高率で, 未分化型胃癌では低率であった.
そこで分化型進行癌60例をc-erbB-2蛋白陽性群29例と陰性群31例とに分類して臨床病理学的所見を比較すると, 陽性群は陰性群に比較して腫瘍径が大きく, INFaが少なく, 腹膜播種が多くみられた(p<0.05).
術後5年生存率を, 分化型胃癌治癒切除59例についてc-erbB-2蛋白発現の有無により比較すると, 陽性群20例は46.4%で陰性群39例の78.0%より不良であった(p<0.05).また, stage I~ II治癒切除例で生存率に差はなかったが, stage III治癒切除例の5年生存率は, 陽性群33.3%と陰性群の75.0%より不良であった(p<0.05).
これらの結果より, c-erbB-2蛋白は胃癌細胞の分化度ならびに胃癌の進展に関連性を有するだけでなく, 分化型進行癌における癌の発育, 浸潤様式, 腹膜播種転移と関連性を有すること, さらに分化型胃癌における術後5年生存率低下とも関連性を有することが示唆された.したがってc-erbB-2蛋白発現の有無は分化型胃癌の生物学的悪性度の一指標となる可能性があると考えられた.

キーワード
c-erbB-2蛋白, c-erbB-2遺伝子, 増殖因子受容体, 胃癌術後生存率

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