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日外会誌. 94(1): 1-12, 1993


原著

高度外科侵襲下の代謝動態に関する検討
-呼気ガス分析法による解析-

秋田大学 医学部第2外科

寺島 秀夫 , 阿保 七三郎 , 北村 道彦

(1991年3月23日受付)

I.内容要旨
高度外科侵襲下における, 代謝亢進状態の定量化ならびにエネルギー基質動態の分類化を解明する目的で, 胸部食道根治術後の代謝動態を主として呼気ガス分析法により解析した.対象は10症例で, 非蛋白性カロリーはグルコースのみにて第1病日15~ 20kcal/kg/ day, 第2病日25~ 30kcal/kg/ day, 第3病日以降30kcal/kg/day以上で投与された.アミノ酸液はカロリー窒素比が160~170となるように配合された.以下の結果を得た.
①安静時消費エネルギー量(REE)は第1~7病日間で約30kcal/kg/day前後で推移し, 各病日で有意の変化を示さなかった.侵襲に加えて, エネルギー投与も代謝動態に影響を及ぼしている.そこで, 著者らはSpecific dynamic action (SDA) を考慮した術後代謝亢進の指標PMIを独自に考案した.すなわち, 各REEから実測した基礎代謝エネルギー量(BEE)を差し引き, これをその時の非蛋白性エネルギー投与量で除した値に変換した.PMIにより代謝亢進の程度は第1病日に最大値をとり, 第3病日まで急激に減少し, 以後ゆるやかに改善することが明らかとなった.PMIは, 術後早期(第3病日まで)に尿中ノルエピネフリン排泄量と有意の相関を示した(r=0.792, p<0.001).PMIにより, 外科侵襲下において代謝状態を定量的に評価できる可能性が示唆された.
②エネルギー平衡(非蛋白性エネルギー投与量からREEを差し引いた値), グルコース平衡(投与グルコース量からグルコース酸化量を差し引いた値), 脂肪酸化有意か合成有意(Net値)か, の3つのパラメーターを組み合わせる独自の手法で, エネルギー基質動態を明快に6型に分類できることを明らかにした.

キーワード
高度外科侵襲, 食道癌術後, 呼気ガス分析法, 代謝亢進の指標, エネルギー基質動態


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