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日外会誌. 93(12): 1489-1500, 1992


原著

ラットにおける総膵胆管結紮モデルでの膵腺房細胞の脆弱性とNafamostat mesilate (FUT 175) の保護効果について

京都大学 医学部第1外科学教室

平野 鉄也 , 真辺 忠夫 , 戸部 隆吉

(1991年7月26日受付)

I.内容要旨
ラットにおいて総膵胆管結紮後18時間までの早期における膵腺房細胞の変化を解明する目的にて,血清amylase値,膵水分量,膵組織amylaseおよびlysosomal enzymeとしてcathepsin B量,膵腺房細胞内でのcathepsin Bのdistributionの変化をin vivoの系にて,また, in vitro の系にて, lacticdehydrogenase ( LDH )の dischargeからみた cellular fragility および cathepsin B leakage よりみた lysosomal fragilityを検討した.さらに,新しい合成 protease inhibitor である nafamostat mesilate ( FUT 175) のこのモデルにおける膵腺房細胞に対する保護効果もあわせて検討した.
総膵胆管結紮後,血清amylase値,膵水分量,膵組織amylaseおよびcathepsin B量のすべてが,control群に比べ有意に上昇したが,前2者が18時間後には正常値に復するのに対し,後2者は18時間目にも以前として高値を保った.さらに,総膵胆管結紮後には,膵腺房細胞内にてcathepsin Bredistribution, cellular, lysosomal fragilityの亢進が観察され,これらの変化はすべて結紮後12時間目に最高の変化を示した.
しかし,結紮後,持続的に FUT 175 (2mg/ kg•hr)を静脈内投与することにより, これらのすべてのparameterは有意に改善され,このモデルにおけるFUT 175の膵に対する保護効果が観察された.
これらの今回の結果は, このモデルにおける膵障害の病態におけるLysosomal enzymeredistributionおよびcellular, lysosomal fragilityの重要な役割を示唆するとともに, FUT 175に感受性のある何らかの未知なproteaseとこれらの変化との密接な関連性をも示唆した.さらに臨床上においては,急性膵炎,就中,胆石性膵炎に対するFUT 175の有効性をも示唆するものであった.

キーワード
膵胆管結紮, cathepsin B, FUT 175, ライソゾーム, 細胞分画法


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