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日外会誌. 93(12): 1481-1488, 1992


原著

肝移植における urosodeoxycholic acid の投与効果に関する実験的研究

順天堂大学 医学部外科学教室(外科学第1)(指導:榊原  宣教授)

野崎 浩

(1991年8月2日受付)

I.内容要旨
Cyclosporine A (CsA)は,強力な免疫抑制効果をもっていることから,臓器移植後のhost-versusgraft-reaction (HVG反応)の抑制に広く用いられている. しかし,肝・腎障害など臓器障害の他に,免疫抑制剤としての根本的な問題である易感染性,発癌性などの副作用がある.これらの問題を解決する1つの方法は, CsAの投与量を減らすことであると考えられる.そこで, CsA投与量の減量を目的として, ラット肝移植モデルを用いて, CsAにursodeoxycholic acid (UDCA)を併用投与して,HVG反応による肝障害が抑制できるか否かを検討した. DonorとしてDA/Slcラット, recipientとしてLEW/Seaラットを用い,同所性肝移植を行った.対照群(肝移植を行いCsAもUDCAも投与しない群), CsA単独投与群(CsA 0.5mg/kg, 1.0mg/kg, 2.0mg/kg投与群), UDCA単独投与群(UDCA 50mg/kg, 100mg/kg 投与群), CsA・UDCA 併用投与群(CsA 0.5mg/kg + UDCA 50mg/kg, CsA 1.0mg/kg + UDCA 50mg/kg投与群)について,生存期間の観察,血液生化学検査,移植肝の病理組織学的検討を行い,以下の結果をえた. 1) CsA・UDCA併用投与群は,同量のCsA単独投与群に比較し有意に生存期間が延長した. 2) CsA・UDCA併用投与群の血中T.Bil. 値, GPT値は,同量のCsA単独投与群に比較し有意に低かった. 3) CsA・UDCA 併用投与群は,同量のCsA 単独投与群に比較して移植肝の組織障害は軽度であった.このように肝移植ラットモデルにおいて, CsAとUDCAを併用投与することで, HVG反応によって起こる移植肝の組織障害が抑制され,結果的に急性拒絶の進展を抑制することができた.以上のことから,臨床の肝移植においてもUDCAの併用投与により, CsAの投与量を減量することが可能であると考えられた.

キーワード
肝移植, Cyclosporine A, Ursodeoxycholic acid

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