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日外会誌. 93(12): 1474-1480, 1992


原著

虚血障害肝によりもたらされる全身循環障害と血小板活性化因子に関する実験的研究

奈良県立医科大学 第1外科
国立循環器病センター研究所 実験治療開発部

福岡 敏幸 , 中島 祥介 , 中野 博重 , 剣持 敬 , 林 良輔 , 鈴木 盛一 , 雨宮 浩

(1991年7月9日受付)

I.内容要旨
肝虚血後の肝不全はしばしば全身循環障害を伴っており,また肝移植後のprimary graft nonfunctionで全身循環障害をきたした際,再移植でこの循環障害が速やかに改善されることが報告されている. このことは,虚血障害肝から循環障害をきたす何らかの物質が放出されていることを示している.そこで肝虚血障害モデルを用いこの循環障害における血小板活性化因子につき実験的検討を行った.
雑種成犬を用い,約70%の肝葉に流入する血行を60分間遮断し,遮断解除後直ちに血行遮断を行わなかった残り30%の肝葉を切除して,肝虚血障害モデルとした.遮断前にPAF拮抗薬3mg/kgを静注投与したPAF拮抗薬群(n=5)と生理食塩水のみを投与した対照群(n=5)で,遮断前後の全身循環動態をモニタリングした.
遮断前の平均動脈圧は157±26mmHgであったが,対照群では遮断解除25分後には89±25mmHgと著明に低下したのに対し, PAF拮抗薬群では155±21mmHgと有意(p<0. 05)に高い値を示した.門脈圧,中心静脈圧,心拍数では両群間に差を認めなかった.遮断解除1週間後までに対照群の3頭(60%) はショックおよび肝不全のため死亡したが, PAF拮抗薬群では死亡例はみられなかった.
以上の結果より,虚血障害肝からPAFが産生放出され全身循環障害がもたらされるものと考えられた.さらにPAF拮抗薬は肝虚血後の循環不全の有効な治療薬となることが示された.

キーワード
部分肝虚血, 血小板活性化因子拮抗薬, ショック

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