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日外会誌. 93(12): 1465-1473, 1992


原著

胃癌の間質における血管の増生とその意義

1) 日本医科大学 第2病理
2) 日本医科大学 第2外科

北 俊典1)2) , 平野 敏一1) , 浅野 伍朗1) , 庄司 佑2)

(1991年8月1日受付)

I.内容要旨
胃癌の間質における血管の特性を知る目的で胃癌27例(分化型癌13例,低分化型癌14例),非癌部胃組織5例,胃潰瘍2例を対象とし,血管の形態変化と共に内皮細胞の分化と機能性を表現するマーカーであるvon Willebrand factor (VWF), IV型コラーゲン,OKM5およびHLA-DRを用い免疫組織化学的に観察し癌の分化度および深達度と生物学的特性との関連性につき検討した.その結果,分化型癌では癌腺管に隣接して血管が多数存在するが低分化型癌では血管は散在性に存在し,分化型癌に比して血管面積の割合も低値であった.また,低分化型癌では分化型癌に比してVWF陽性の血管が有意に少なく,逆にVWF陰性の血管が多数認められた. IV型コラーゲンは分化型癌では血管周囲および癌腺管周囲の基底膜に認められた.しかし低分化型癌では血管周囲には局在が認められたが癌細胞周囲にはその局在はみられなかった. OKM5は低分化型癌の中心部の血管に局在が認められ,そのうち2症例のVWF陰性の血管にOKM5の局在がみられた. HLA-DRは一部の癌細胞に陽性所見を認めたが,血管内皮細胞には明らかな局在はみられなかった.電子顕微鏡的観察では分化型癌で血管内皮細胞の細胞内小器官が増加し肥大傾向があり, Weibel-Palade bodyをほぼ全例に認め,基底膜も全周性に認められた.一方,低分化型癌では細胞内小器官の増加は軽度で肥大傾向もわずかで, Weibel-Palade bodyが認められないものも多く内腔は狭小化していた.基底膜は一部不明瞭な部分が見られたが全周性に存在した.以上,胃癌の分化度および深達度と相関して間質における血管の分布,形態および機能に変化が認められた.これらの変化は癌細胞,血管内皮細胞および間葉系細胞が相互に関与している結果と推察され,血管が腫瘍の増殖,進展,転移と密接に関連し,腫瘍の生物学的特性と予後を規定する大きな因子である事が示唆された.

キーワード
胃癌, 血管内皮細胞, 免疫組織化学, von Willebrand factor (VWF), IV型コラーゲン


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