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日外会誌. 93(12): 1458-1464, 1992


原著

胃癌組織型と腫瘍関連糖鎖抗原の癌組織内局在の関連性についての研究
―モノクローナル抗体を用いての検討―

東海大学 医学部外科2
*) ワシントン大学 病理

中崎 久雄 , 花上 仁 , 宮治 正雄 , 生越 喬二 , 田島 知郎 , 三富 利夫 , 箱守 仙一郎*)

(1991年7月14日受付)

I.内容要旨
異なる糖鎖抗原を認識する複数のモノクローナル抗体(以下MoABと略す)を用いて胃癌組織を免疫酵素組織化学的方法で染色して従来のhematoxylin-eosine(HE染色法)による癌組織の組織型との関連性について検討した.その結果,免疫酵素組織化学的方法によるMoAB-SH1の染色が認められる癌組織部には他のMoAB-FH4,AH6, FH6, TKH2の染色性は認められなかった.MoAB-SHlと同様に他のMoAB-FH4,AH6, FH6でも各々が特有の染色局在を示し同一癌部の複数のMoABによる染色の重複はほとんど認められなかった. HE染色所見で同一の組織学的形態を呈していてもモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的染色のパターンでは,複数の抗体の局在性を示し各モノクローナル抗体によるいわゆる相補分布性(MOSAICISM)が認められた.また胃癌組織型とモノクローナル抗体の局在の関連性について検討した結果進行胃癌の高分化型腺癌ではMoAB-SH1およびAH6の局在が優位に認められた.早期胃癌ではMoAB-AH6の染色性はほとんど認められなかった.進行胃癌の低分化型腺癌ではMoAB-SH1, AH6やより特異性の高いMoAB-FH4の局在が優位に認められた.また早期癌から進行癌への癌の発育進展にともないMoAB-AH6の局在が著明に認められるようになった.また原発巣と転移巣の検討ではMoAB-SH1の染色性が転移癌組織の部位では低下している.これらの結果よりいわゆるcarcinoma in situの発生初期状態では同種,同質の糖鎖構造をもった癌がその増殖・進展につれてあらゆる方向に様々に分化発育を遂げ複雑な糖鎖構造へと変化し癌の多相性(HETEROGENEITY)を獲得するものと推察された.

キーワード
モノクローナル抗体, 糖鎖抗原, 多相性, 相補分布性


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