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日外会誌. 93(11): 1416-1419, 1992


原著

甲状腺分化癌非根治手術症例における予後因子の検討

伊藤病院 

杉野 公則 , 伊藤 國彦 , 三村 孝 , 尾崎 修武 , 山下 共行 , 北村 裕 , 岩渕 裕

(1991年7月27日受付)

I.内容要旨
局所進行性甲状腺分化癌の治療については議論が多い.それは甲状腺分化癌の生物学的悪性度の低さと拡大手術によるquality of lifeの低下に起因している.局所進行性の甲状腺分化癌の自然経過および治療指針を得る目的で,他臓器に浸潤した甲状腺分化癌のうち明らかに姑息的手術でおわった症例について各種臨床的因子を基に統計学的解析を行い,生命予後因子を求めた.1965年から1986年に当院で経験した姑息的手術でおわった局所進行性甲状腺分化癌患者70例を対象とした.死亡例は45例で,原病死44例,他病死1例であった.多変量解析はCoxの比例ハザードモデルを用いた.説明因子は年齢,性,経過中の遠隔転移の出現の有無,病理組織像,浸潤臓器数,切除範囲(手術方法),放射線外照射療法,アイソトープ療法の8つの変量を用いた.その結果,年齢の因子が最も有意に高い因子であり,予後に大きく影響を与えていた.その他の因子では遠隔転移の発現が予後に反映している有意な因子であった.局所進行性の甲状腺分化癌の予後は,非進行性甲状腺分化癌と同様に年齢による影響が大きく,高齢者と若年者とでは局所進行性の甲状腺分化癌に対する拡大手術および術後のadjuvant therapyについては区別して考慮するべきであると考えられた.

キーワード
進行性甲状腺分化癌, 姑息的手術, Coxの比例ハザードモデル

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