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日外会誌. 93(11): 1390-1397, 1992


原著

食道静脈瘤に対する直達手術の肝容積変化に及ぼす影響

新潟大学 医学部外科学第1講座(指導:武藤輝一教授)

加藤 英雄

(1991年7月1日受付)

I.内容要旨
特発性門脈圧亢進症(以下,IPH) と肝硬変症(以下,LC)を含む門脈圧亢進症症例を対象として直逹手術後長期にわたって肝容積及び肝機能がどの様に変化するかを検討した.今回, 1983年4月から1989年3月までに新潟大学第1外科で経胸経横隔膜的食道離断術を施行されたIPH症例11例(以下IPH群),LC症例13例(以下LC群)を研究対象とした.肝容積は手術前および術後6~70カ月,平均28±20カ月にCTscanで測定し, ICG血漿消失率(以下KICG),体重,一般肝機能検査も同時期に評価した.食道静脈瘤手術症例全体の術前の肝容積は1,075±244cm3(586~1, 694cm3)であったのに対して,術後の肝容積は920±241cm3(523~1,371cm3)と直達手術後有意に肝容積の低下をみた(平均14.4%低下,p<0.01).また,術前のKICGは, 0.115±0.038から術後0.089±0.028と有意に低下した(平均22.6%低下,p<0.01).全体として肝容積変化量は術前脾容積と相関した.基礎疾患別にみると肝容積,KICGともにIPH群の方がLC群より著明な低下傾向を示した.(IPH群:平均22.8%の肝容積低下, p<0.01,平均25.7%のKICG低下,p<0.01, LC群:平均9.6%の肝容積低下,p<0.05, 平均15.2%のKICG低下,p<0.05)しかし,術後の体重減少は見られず,また術後肝機能の悪化は見られなかった.以上より,食道静脈瘤手術症例において脾摘及び血行郭清を伴う直達手術後肝容積が減少し,その主な要因は脾血流の遮断による有効肝血流量の減少であると考えられた. しかし遠隔期において肝機能の悪化や体重減少は見られず,直逹手術症例における有効肝血流量の減少は予後に重大な影響を与えないと考えられた.

キーワード
肝容積, Computed tomography, 門脈圧亢進症, 食道静脈瘤, 直逹手術

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