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日外会誌. 93(11): 1378-1383, 1992


原著

鈍的腹部外傷の開腹適応決定における
超音波検査腹腔内出血所見の意義

日本医科大学 救急医学教室(主任教授:大塚 敏文)

木村 昭夫

(1991年6月26日受付)

I.内容要旨
鈍的腹部外傷における超音波検査(US)の腹腔内出血所見の信頼性及び開腹適応との関連性について検討を加えた.
1989年3月より翌年9月までに, USが施行された鈍的外傷200例を対象とした.受傷早期に繰り返しUSを施行したモリソン窩またはダグラス窩に無エコー領域を認めたものを,腹腔内出血隔性(H+) とした.
初期の72例でのUSにおける腹腔内出血の検出能はSensitivity 87%, Specificity 100%, Accuracy 97%であった. H+かつ循環動態が不安定な19例中18例(95%)がPositivelaparotomyであった.H+ではあるが循環動態が安定していた13症例のうち,開腹に至った症例は6例(46%)であった.そのうちUSの反復施行により腹腔内出血の出現もしくは増量の理由により開腹した症例が4例で, 4例ともモリソン窩の無エコー領域の最大幅が10mm以上であった.USで腹腔内出血が示されず,循環動態が安定していた148例中8例(5.4%)が開腹となったが,その内7例(89%) は腹膜刺激徴候陽性が適応理由であった.
以上の結果は, 1) 循環動態が不安定な鈍的外傷において, USで腹腔内出血が認められれば開腹適応であること. 2)循環動態が安定していて,腹膜刺激症状も無く,少なくとも二回のUS検査で,腹腔内出血が認められなければ,保存的に経過観察し得ること. 3) USで腹腔内出血が認められるが,循環動態が安定している患者においては, USを反復施行し,モリソン窩の無エコー領域最大幅が10mm以上に逹すれば,開腹適応となることを示すものである.

キーワード
鈍的腹部外傷, 超音波検査, 腹腔内出血, 開腹適応

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