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日外会誌. 93(10): 1341-1346, 1992


原著

自家静脈グラフトの Prostacyclin 産生能

旭川医科大学 第1外科

中山 一雄

(1991年6月14日受付)

I.内容要旨
自家静脈グラフトのProstacyclin(PGI2)産生能について,その採取から拡張処理による影響および,移植後の変化を基礎的に検討した.方法は雑犬10頭の外頸静脈を拡張処理後ヘパリン加自家血またはヘパリン生食に180分間浸漬し,経時的にPGI2産生量を測定した.次に雑犬9頭を用いて静脈採取から血行再開まで60分以内に完了することにより内皮細胞を極力温存した外頸静脈グラフトを腹部大動脈に移植し, 1, 3および6週後にグラフトを摘出してPGI2産生量を測定した.外頸静脈グラフトの移植前PGI2基礎産生は,拡張処理後60分で有意に低下し,拡張直後値との比でみると,ヘパリン加自家血調整: 0.55±0.10(平均±SE), ヘパリン生食調整:0.38±0.10であった(p<0.001), しかしアラキドン酸添加条件下におけるPGI2産生は拡張処理後120分でようやく有意の低下を認め,ヘパリン加自家血調整:0.67±0.10, ヘパリン生食調整: 0.66±0.08であった(p<0.001).PGI2基礎産生は形態学的変化に先行して低下した.しかしアラキドン酸刺激下では内皮細胞の高度な変形,脱落があるにもかかわらず産生が比較的保持されたことから,非内皮細胞由来のPGI2が推察された.移植AVGのPGI2産生は, 1週: 169±27, 3週: 251±25, 6週: 355±156pg/cm2/minであった.移植AVGは1週で再内皮細胞化が完了し, PGI2産生も摘出正常静脈とほぼ同等となったが,その後もさらに産生の増加傾向を示した.従って再内皮細胞化が完了した後内皮細胞機能は動脈化に向けて機能亢進が起こるものと考えられた.

キーワード
静脈グラフト, 内皮細胞, Prostacyclin

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