[書誌情報] [全文PDF] (608KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 93(10): 1312-1316, 1992


原著

大腸腫瘍における癌抑制遺伝子 p53 の発現と悪性度

金沢大学 医学部第2外科

山口 明夫 , 伏田 幸夫 , 黒阪 慶幸 , 神野 正博 , 米村 豊 , 宮崎 逸夫

(1991年6月20日受付)

I.内容要旨
大腸腫瘍においてp53の発現を免疫組織化学的に染色し,臨床病理学的所見および予後との関係について検討した.大腸腺腫にはp53の発現が見られなかったが,大腸癌では96例中59例(61.5%)に陽性像がみられた.大腸癌におけるp53の局在は核内にみられた.大腸癌においてp53の発現と臨床病理学的所見との関係をみると,組織型,腫瘍径,深達度, リンパ管侵襲,静脈侵襲およびリンパ節転移との間には相関がみられなかった.また肝転移では,肝転移陽性例のp53陽性率が78.9%と陰性例の57.1%に比して高率であったが,有意差は認められなかった.しかし治癒切除可能73例の再発率を見ると, p53陰性例の3.3%に対して, p53陽性例では20.9%と高率になった.また予後をみてもp53陰性例の3年生存率96.3%に対して, p53陽性例では58.2%と有意に不良となった.Cox比例ハザードモデルによる多変量解析でも, p53の発現は肝転移,組織型,脈管侵襲とともに有意な予後規定因子であることが明らかにされた.また腫瘍の増殖細胞率を示すDNApolymerase a陽性細胞率をみても, p53陰性例の40.7%に比し, p53陽性例では49.0%と有意に高率となった.以上よりp53の免疫組織学的検索は大腸癌の予後因子の一つとなりうることが示唆された.

キーワード
大腸癌, 癌抑制遺伝子, p53, DNA polymerase α 陽性細胞率


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。