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日外会誌. 93(10): 1282-1288, 1992


原著

食道静脈瘤に対する食道離断術後の下部食道機能と粘膜微小循環動態について

大阪大学 医学部第2外科

田村 茂行 , 塩崎 均 , 小林 研二 , 田原 秀晃 , 宮田 幹世 , 岡 博史 , 森 武貞

(1991年6月20日受付)

I.内容要旨
食道静脈瘤に対する経腹的食道離断術後20例につき,食道の内圧,粘膜血行動態を測定し,術後逆流性食道炎,術後経過時間,静脈瘤再発との関連について検討した.内圧測定は,半導体圧センサーを用いて測定し,健常者20例を対照とした.また,粘膜血行動態は臓器反射スペクトル法で測定し,対照としては静脈瘤を有する肝硬変患者で,手術を受けていない10例を用いた.
下部食道機能の検討では,術後症例は健常者に比べ,下部食道の嚥下性収縮波高が有意に障害されていた(26.1±20.5mmHg vs. 80.0±20.0mmHg:p<0.01). 食道炎の有無の比較では,嚥下性収縮波高は合併群は12.4±18.7mmHgで,非合併群の31.0±19.4mmHgに比べて低値(p<0.05)を示したが,昇圧帯圧および昇圧帯幅には有意差は認められなかった.
粘膜血行動態の検討では,血液量,ヘモグロビン酸素飽和度において,食道炎合併症例,非合併症例および非手術症例に有意差は認められなかったが,術後症例では,粘膜血液量は,術後経過の長い症例ほど高値を示す傾向が見られた.静脈瘤の再発との関連では, RCsignの有無では有意な差は認められなかったが, F因子の増大とともに粘膜血液量は増加傾向を示し,また,ヘモグロビン酸素飽和度は静脈瘤非再発症例の50.3±5.9に比べFl症例では45.3±4.1と有意に低値を示した.
以上より,食道離断術後の食道炎は,下部食道のクリアランス機能の低下が一因となっていた.また,静脈瘤再発症例では,粘膜微小循環障害(うっ血)が認められ,静脈瘤再発と粘膜血行動態の関連が示唆された.

キーワード
経腹的食道離断術, 下部食道機能, 半導体圧トランスデューサー法, 粘膜血行動態, 臓器反射スペクトル法

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