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日外会誌. 93(10): 1272-1281, 1992


原著

インターロイキン 2 の感染防御能賦活作用に関する実験的研究

千葉大学 医学部第2外科(主任:磯野可一教授)

豊泉 惣一郎

(1991年6月15日受付)

I.内容要旨
免疫低下状態下のマウスにおけるインターロイキン2 (以下IL-2)の感染防御能に及ぼす効果を実験的に検討した. ddYマウスを用いて300radの全身照射を行い,免疫能低下モデルを作成,実験(I)としてこのマウスにヒトrecombinant IL-2 2万u/headを5日間腹腔内投与後,各種免疫パラメーターを測定した.
実験(II) として免疫能低下マウスに盲腸結紮穿孔による腹膜炎を作成,直後より抗生剤の投与を行い, 2週後の生存率をIL-2投与の有無で比較した.また,その機序についても検討を加えた.
実験(I)において, IL-2投与群では大動脈血中好中球数及びリンパ球数とも有意に増加した. T/B細胞比率に差はなかったが,脾細胞幼若化反応はIL-2投与群で有意な増強が認められた.腹腔内浸出細胞(PEC)は, IL-2投与群で単球ーマクロファージ系細胞の有意な増加を認めた.また,リポポリサッカライド(LPS)投与後の非特異的な免疫グロブリン産生は, IL-2投与群で有意に増加した.
実験(II) の腹膜炎マウスの生存率はIL-2非投与群では抗生剤投与量に関係なく生存率の向上はみられなかったが, IL-2投与群では抗生剤投与量に比例して生存率の有意な改善を認めた.腹膜炎作成前日にカラゲナン及び抗L3T4,抗Lyt2抗体の投与を行った結果,いずれの群においても生存率の低下が認められ,腹膜炎マウスの生存率改善にリンパ球及び単球ーマクロファージ系細胞が関与していることが考えられた.
以上の結果より免疫能低下状態における感染防御能賦活療法として, IL-2投与の有用性が示唆された.

キーワード
インターロイキン2, 感染防御能, 免疫能低下状態, 盲腸結紮穿孔性腹膜炎

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