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日外会誌. 93(10): 1265-1271, 1992


原著

新しい生体弾性接着剤の特性

滋賀医科大学 第1外科学教室
*) 三洋化成工業 

谷 徹 , 沼 謙司 , 吉岡 豊一 , 荒木 浩 , 横田 徹 , 小玉 正智 , 伊藤 哲雄*)

(1991年6月14日受付)

I.内容要旨
非発癌性のフッ素化ヘキサメチレンジイソシアネートを用いたウレタンプレポリマー(PUP-201)につき,基本的特性を応用組織に用いて検討した.すでに市販されている生体医用接着剤(止血剤)と比較すると,初期接着強度では, フィブリン製剤(ティシールⓇ, ベリプラストⓇ)の40倍以上,耐水接着強度では150倍の能力が認められ,硬化時間は50秒と操作に必要な時間が得られた.伸び率は1.5倍と生体の腸管組織に近い値を示した.溶出による抗菌作用は認めなかったが,表面に菌は発育しなかった.
皮膚の接着強度は,ブタの皮膚を用いて検討した. 5分後に2.0~3.7kg/cm2のひっぱり剪断力を示し, 24時間後も2.0~2.8kg/cm2が維持された.マウス皮膚に貼布し, 2カ月にわたり観察しても,皮膚の強い反応はみられなかった.
消化管の接着力をブタ小腸壁を用いて検討した.漿膜一漿膜接着も,粘膜一粘膜接着も, 5分後まで接着強度が増強し,その後は緩徐に,更に強度が増強する傾向を示した.最高値はそれぞれ0.4~1.0kg/cm2と0.1~0.5kg/cm2であった.
実質臓器出血の止血実験を雑犬の肝切断面について行い,数mm径の血管からの出血が3分以内に止血可能であった.組織学的検索で,接着剤による肝細胞への影響は少なく,炎症性反応も軽度であった.
肺切断面のシーリングは,雑種犬肺を部分切除後,切断面の空気,血液の噴出を肝切断面と同じ方法により検討を行った.鶏卵大の切断面は3分以内にシーリングが可能であった.気道内圧は直後に30~40cm水柱まで耐圧可能であった.
PUP201は,市販の止血剤に比べ圧倒的に強い接着力と生体組織に近い弾性を有し,皮膚,腸管接着,実質臓器止血や肺のシーリングに応用が可能であることが示された.

キーワード
接着剤, イソシアネート, sealant, 止血剤, ウレタン

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