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日外会誌. 93(8): 861-863, 1992


症例報告

極めて微小な痔瘻癌の1例

大腸肛門病センター高野病院 

橋本 正也 , 高野 正博 , 藤好 建史 , 高木 幸一 , 河野 通孝

(1991年5月18日受付)

I.内容要旨
10年以上経過した複雑痔瘻に癌を伴うことは従来より知られている1)~5).今回,単純な高位筋間痔瘻に合併した極めて微小な痔瘻癌を経験した.症例は47歳男性,10年以前より肛門周囲膿瘍,自然排膿を繰り返していた.単純性高位筋間痔瘻と低位筋間痔瘻を認め痔瘻根治術を施行したところ,高位筋間痔瘻の瘻管内に粘液の貯留を認め,痔瘻癌が疑われた.瘻管の組織学的検索で粘液癌が証明された.瘻管周囲の瘢痕組織を括約筋とともに追加切除したが,癌細胞は認めず,瘻管に限局して癌細胞が存在する早期の段階の痔棲癌と診断された.本例のような微小な痔瘻癌の報告は,我々の調べ得た限り無く,また痔瘻癌の発生母地が肛門腺細胞であることを強く示唆する極めて貴重な症例と考えられるので報告する.

キーワード
痔瘻癌, 肛門部癌

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